008.「何だと思ってるの?」 ページ10
国木田さんの表情には、今迄大宰により積み重なった苦労が描かれている様な気がした。
ーー太宰は此の人にどんな事をしてきたんだ。
聞けば国木田さんは俺と太宰と同い年だと云う。同い年にしては国木田さん……貫禄出てないか?
「今迄大変だったんですね……全部とは云わなくても判る気がします。…お疲れ様です」
「此の唐変木には散々煮え湯を飲まされてきたからな……」
俺と国木田さんは同盟が出来る勢いで、熱い握手をかました。
成る程。此の人は共感出来て、愚痴を零す相手が必要なんだな。
「ねえ
「太宰。国木田さんは気苦労が絶えなかったんだ。一人ぐらいメンタルケアの相手がいなきゃ、此の先お前に振り回されて死ぬぞ」
「久城も此れから垣間見る事になるだろう。此奴の凡ゆる嫌がらせの数々を……」
「自分は今日太宰と初対面ですが、すごく想像出来ますね」
「ええ?蓮君も国木田君も私を何だと思ってるの?」
「「詐欺師」」
俺と国木田さんは一寸違わず同時にハモった。
すると太宰は「二人共ひどい!」と泣き真似をしている。そう云う処が嘘くさい。
「久城。改めて云うが、探偵社は危険な仕事を専門とする。決して柔な仕事ではないぞ」
「自分も太宰から聞かされました。ーー覚悟は有ります」
「……ふん。此の唐変木の様に社に迷惑を掛け、社の看板を汚す様な真似はするな」
「肝に銘じます」
俺は、表情筋を上げてにっこりと微笑んだ。此処まで来たら遣るしか無いだろう。覚悟は看板を潜る気になってからとうにしているのだから。
「
「やっとか。疾くご挨拶に伺いたかったんだ」
何時の間にか泣き真似を辞め、身体を起こした太宰が歩き出すと俺も後に続いて行く。
社長室の扉の前に辿り着くと、太宰はノックし「社長、太宰です。連れて来ました」と幾分か澄ました声で云う。
すると中から威厳の有る、よく通る声で「入れ」と簡潔に入室を促された。確かに声は社長っぽい。
此の物騒な『武装探偵社』を設立したのは今の社長なんだと聞かされた。
ーー果たしてどんな方なのか、人物像が全く思い浮かばない。
そして先に入って行く大宰の後に続いて「失礼します」と云い、中に入れば和風で造られた部屋が広がっている。
扉から程近い処に社長専用デスクがあり、其の執務椅子に和服に身を包んだ初老の男が座っていた。
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作者名:澪 | 作成日時:2016年6月12日 11時