041.「何か云う事は?」 ページ43
普段と違う俺の物云いにとうとう国木田さんはポカンとアホ面になった。
やがて、冷汗を浮かべ乍ら恐る恐る口を開く国木田さん。
「く、久城。俺は決して騙した訳ではーー」
「見苦しい云い訳は辞めな!
一番は画策した太宰が悪いが、結果黙って見過ごしたあんたの責任でも有るだろーが!」
国木田さんの言葉を遮ってピシャリと吐き棄てれば、「……う」と云って国木田さんは其れ以上何も云えなくなった。
俺は相当頭に来ていたので、どんな風に云われ様と論破する心構えだったが……すると如何だ。
意外と国木田さんは何も云わずに、気まずそうに目を逸らした儘。
何時も太宰には厳しく当たってるから、誰に対しても云い返してくるもんだと思ってたのに。
それか俺の猫被りにギャップを感じて戸惑ってるのか知らねえけどさ。
「……他に何か云う事は?」
「いや。確かに久城の云う通りだ。
……済まなかった。お前の気持ちを考えるべきだった」
「……」
意外過ぎる。こうも呆気なく謝られては、俺も此れ以上何も云えない。
そして本気で反省してるっぽい国木田さんの顔を見て、俺は盛大に溜息を零して頭を掻く。
「あーもう。判りました。良いです。
太宰と違って悪気は無かったんでしょう?
此れ以上俺だけがかっかしてても面倒だしね」
「そ、そうか。済まなかったな久城」
「いえ、此方こそ。俺も大人気無く怒って済みませんでした」
俺が眉尻を下げて苦笑してみせれば、国木田さんは徐ろに此方へ近付いては手を差し出した。
「…敬語は辞めてくれ。太宰との絡みを見る限り、太宰の前では砕けているのだろう。もっと楽にしてくれ」
そう云う国木田さんに今度は俺が呆気を取られ、過剰に瞬きをしてしまった。ーー俺の中の国木田さん像がガラリと変わった瞬間で有る。
そして差し出された手を漸く握って、仲直り?した。
「…改めて、此れからも宜しく国木田……さん」
「呼びやすい様に呼んでくれ。よろしーー」
「蓮君っ!!!!!!!!!!!!!!!」
「うっっっっわ!!!!!!!」
微かに国木田との友情が芽生えそうな時、床と宜しくやってた太宰がガバッと俺の背後から抱き付いて来た。
余りにも勢いあり過ぎて、俺は反動を抑え切れずに其の場で太宰と共倒れになる。
病み上がりの身体なのに衝撃をまんま受けてしまい、太宰の重みも相俟って起き上がる事が出来ない。
「蓮君私の事を放置して国木田君と宜しくしないでよ!」
「…お前は俺の彼女か」
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作者名:澪 | 作成日時:2016年6月12日 11時