024.「あと十枚だけ!」 ページ26
其れからと云うもの、俺は遣ると決めたら行動は疾い。
車の中で太宰の
先ずカクテルドレスと云うもの。青い生地で全体的に花柄があしらっており、腰に大きめのリボンが付いている。着てみたら脚は隠れるぐらいの丈で存在感が有る。
靴は黒のスウェード生地のパンプス。少し歩き辛い。……が。
かなり気に食わないが、小さい頃履いていた事が今更役に立っている。
そしてウィッグと云われる物。此れは何故か太宰が被り方を知っていたので手伝って貰って、鏡で見ても自然に被れている。
んでもって「次いでだから」と太宰が何処から持って来たのか化粧道具を持って、俺の顔にナチュラルメイクを施された。……此奴、なんで化粧の遣り方なんか知ってんだよ。
大人しくされるが儘になっていた俺は太宰に引っ張られて、鏡で全体的に見たら完全に『女』だった。
自分でもこんなに見間違えるとは思わなくて、其れと同時に自分の『男』と云うプライドがズタボロになった瞬間だった。そして不覚にも太宰のセンスは完璧だったと証明された事になる。
「いやあー、蓮君綺麗!素晴らしく妖艶な美女だ!私の見立ては完璧だね!」
「俺には此処まで遣るお前が心底腹立たしいよ……」
「まあまあ、善いじゃないか。どうせ遣るなら完璧に仕上げるのが筋だろう?」
「こうも変わると俺の男として自信が無くなるだけだがな……」
俺は絶望した。
こんな完璧に女に成り切っても元は男なんだ。何のプラスにもならねえし、何の役に立たない。自分の中の黒歴史に、刻印を深く刻まれただけだ。
そしてふと太宰の方を見れば、何時の間にか着替えたのかフォーマルな黒のダブルスーツに身を包んでいる。ーー嗚呼、俺の好きなダブルスーツだ。羨ましい。
しかもちゃっかり着こなして、服装と相俟って更にイケメンになった。
糞…此奴だって中性的な顔立ちなんだから絶対女装が似合うのに、身長差で負けてしまった事に世の中不平等だと嘆いてしまいそうになる。
だが、もう此処まで来てしまったら遣るしか無い。もうグチグチ嘆くのは辞める。
「おい、太宰。 写真はもう充分だろ」
「一寸待って、あと十枚だけ!此処の角度は撮ってないから!」
「……先刻から何十枚撮ってんだよマジで」
そう。黙ってれば確実にもっとモテる筈なのに、此奴は人目も憚らず、カメラで何十枚も俺の写真を撮る。
しかも写真なんか物的証拠になるのに……今日はマジで人生で一番最悪な厄日だ。
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作者名:澪 | 作成日時:2016年6月12日 11時