10月、恋は現在進行形。【まふまふ】【お話つめあわせ】

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「I'm loving you.って、なんで現在進行形にしたの？」

一応これは英語のテスト。僕は採点してるだけ。
そう思い込んで、必死に冷静を装う。


「だって、現在進行形って『今この瞬間の行動、状態』って意味なんでしょ？真冬が教えてくれたじゃん。」

Aが、いかにも普通そうに首をかしげて言う。


うーん、そうなんだけど、それはあってるんだけど…。

「loveは、ルール上進行形にしないんだよね。だって、『好き』っていうのは感情でしょ？ 状態にできないっていうか、説明難しいんだけど…。」



分かりやすい説明ができなくて考え込んでいると、

僕をふわりとなにかが包み込んだ。


「じゃあこれでどう？ 今この瞬間、私は『好き』って気持ちを行動で表してるよ？」


昔は僕の方が小さかったのに、いつのまにか離れていた身長。

僕の背中に腕を回す彼女は、胸に顔をうずめると、僕の瞳を見上げてえへへ、と笑った。


キャパオーバー。


もう僕はどうしたらいいかわからなくて、Aへの思いが止まらなくて、

Aを抱きしめ返すことしかできなかった。


「わかったよ、もう十分わかったよ…。Aには百点満点あげるしかないなあ。」

やったあ満点！と無邪気に喜ぶA。



風に揺れるカーテンの隙間から夕日が漏れていて、Aをほんのり赤く染める。

「…ほんとに、僕でいいの？ 冗談じゃないよね、本気だよね、」

急に不安になってきて聞くと、容赦ないチョップが頭に飛んできた。痛い。


「なにいってんの、冗談言うわけないじゃん！
真冬の方こそ、告白の仕方が個性的過ぎて分かりにくいの…。びっくりしたのはこっちだよ…。」

最初は少し怒気をはらんでいた声が、少しずつ弱くなって、Aはぷいっと違う方向を向いてしまった。



「私の、片思いだと思ってたのに。大好き、」

頬がいつもより赤く見えるのは、夕日のせいなのか、それとも。


小さな声でぼそりとつぶやかれたその言葉は、秋のやわらかな風に乗って、しっかり僕の耳まで飛んできた。


今度は、僕が強めにぎゅっと抱きしめる。

実は、現在進行形には『未来はどうなっているかわからない、一時的な状態』みたいなニュアンスもある。

それが少し怖かったんだ。

僕には、Aがいない未来は考えられないよ。

僕はどこにもいかないから、Aも離れていかないでね。お願い。



「I love you.」

僕は、Aの耳元でそっとささやいた。




10月、恋は現在進行形。

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