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side you
そ「2つ目。どうしてこの森に来たの。」
そらるさんが2つ目の質問を口にすると、彼の顔が一気に曇った。もしかするとこの質問は先程のトラウマか何かに繋がっているのかもしれない。
そ「‥‥‥言いたくないかもしれないけど、言ってくれなきゃ俺達もめいちゃんのこと信用できないんだよね。流石に何者かも分からない奴を置いておけるほど優しくないからさ。」
そらるさんが優しく諭すように語りかけると俯いていた顔をゆっくり上げ、形の良い口を開いた。
掛け布団を掴んでいる手は震えており顔色も少し悪い。恐らく彼が抱えているものは大きすぎる。きっと彼自身でも気づいていないほどに。
め「実は俺、虐待みたいなのされてて‥‥‥」
そ「虐待“みたい”ってどういうこと?」
め「親の機嫌が悪いと暴力を振るわれたり色々な雑務を押し付けられるだけなので完全な虐待とは言えないかなと思って‥」
思わず疑問の声が出てしまいそうだった。そんな理不尽なことをされているのならそれはもう虐待で確定して大丈夫なはずなのに確信を持てない彼に驚いたのだ。
きっと彼は「自分よりも辛い人が居るから自分なんて幸せな方なんだ」と思って生きてきたのだろう。何度か会話しただけで滲む彼の優しさがここで仇となったと理解する。
そ「………めいちゃん。それは“みたい”じゃなくて確定で良いんだよ。いじめも同じ。自分が嫌だと思ったらその時点でアウトだ。」
優しさ故か自分のことを蔑ろにする彼にそらるさんはまた諭すように教えた。
ペンを滑らせる手にも無意識に力が入っていたようで、インクがじわりと滲んだ。彼は相変わらず沈んだ顔をしていて、そららさんからの言葉に納得し難い様子だった。小さな頃から縛られてきた考えが今も彼を支配する。
幼い頃に付けられた傷が今も癒えてないのは由々しき問題だ。
そらるさんと目配せをして彼のケアを決定したことを紙に書いていると、「自分達を蔑ろにするな」なんて声が響いた気がしたが 無視することにした。
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作者名:聖 | 作成日時:2022年7月20日 16時