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side srr
そ「ごめん遅くなった。‥‥‥で、患者は?」
『この人です。』
ドアに背を向けて立っていたAに退いてもらい、先程見たばかりの顔を見つめて一応自己紹介をする。
そ「俺は一ノ瀬 彼方。君は?」
め「う、唄華 めいです。」
そ「めいちゃんか‥‥‥」
“めいちゃん”と、今思いついたばかりのあだ名で呼ぶと彼はひどく驚いた顔をして小さく手をわたわたさせていた。その様子が何だか小動物みたいで、やはり此奴には“めいくん”ではなく“めいちゃん”が似合うなと思った。
そもそも俺はあまり人にあだ名など付けないのだが、今回は気分が乗ったようだ。久しぶりの
目の前の美しく体格の良い彼を見つめて、口角を緩めた。
side you
‥‥‥‥そらるさんが笑った?
見間違いかもしれないと思い、もう一度 青髪の彼を見る。‥‥どうやら見間違いではなかったようだ。
此処で過ごして何年も経っているが彼の笑顔を見ることは両手で数えられるくらいしか無かった。
無愛想という訳ではないのだが、彼は嬉しいことがあった時笑うのではなく、周りの空気‥雰囲気を柔らかくするのだ。
それなのに今はこうしてはっきりと感情を表に出している。
『珍しい‥‥‥』
め「ん?Aさん何か言いました?」
『いいえ、何も。』
自分でも意図せぬ内に声が出ていたようで思わず姿勢を正した。
‥‥‥それにしても、そらるさんですら聞こえたのか分からない声量を拾うなんて、もしかするとこの人 ただの人間じゃなくて私達と同じなのかもしれない。
‥‥そうだといいな。
私は塵程しか無い願いを、目の前の彼に託した。
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作者名:聖 | 作成日時:2022年7月20日 16時