【あんスタ】夜行少女【逆先夏目】 (ページ45)

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3.5章　本来の世界ページ45

静かに寝息を立てながら眠る彼女の頭を優しく掌で撫でてみる。

額に乗っていたタオルは彼女の熱を吸収したのか随分とぬるくなっていたので濡らすために一度額から外した。冷水に浸し、水をよく搾り切ってからもう一度彼女の額へと乗せてやると何処か彼女の表情が和らいだ様にも見えて自分も思わず安堵する。

すうすうと小さく寝息を立てている彼女、今の所起きる様子は無さそうだ。

椅子からそろりと立ち上がれば部屋を照らしていた電気を消し、その代わりに───。

部屋を暗く覆っていた、遮光カーテンをカシャリと開けてやった。

すると部屋には異様に眩しい程の日光が差し込んで、丁度眠っている彼女を照らしている。

街の灯りに照らされた彼女の姿しか見た事が無かったが日光に照らされる彼女の姿は何だか普段よりも美しく、可憐に見えた気がして。

(………やっぱり、星の元に彼女を隠しておくのは勿体無いヨ。)

こんなにも日差しを浴びている姿が似合うというのに、彼女にはそれが許されない。起きている間の彼女は日差しをロクに浴びる事さえ出来ないのだという。

閉ざされていた窓を開けてやれば外からは暖かな風が部屋の中を通り抜け、空気を綺麗なものへと変えていく。

清々しい空気と暖かな日差しが差し込む部屋、本来ならばこれが彼女の見るべきだった世界。……それを‘何者か’が暗く閉してしまったのだ。

「………さテ、どうしたものかナ。」

可哀想に、夢の中へと眠っている少女はこの世界を見る事すら叶わない。

きっと何処かで望んでいた光に照らされている事すらこの少女は気付かないのだろう。

(先程の問い掛けで、Aちゃんは迷っていタ。)

迷うという事は少なからず昼の世界でも起きていたいと思っている、という事だろう。

それならば、

(……これハ、‘魔法使い’の出番かも知れないネ。)

せめて、眠っている間くらいは幸せな夢を。また魘されたりはしないように。

(…次の‘魔法’は念入りな準備が必要になりそうダ。)

悪夢から彼女を守る様、布団の上から彼女を撫で続けてあげた。