選んだのは…青 ページ43
日が沈み、濃紺に染まった空を部屋の中から眺めながら彼らの言葉をひとつひとつ丁寧に反芻する。ちらりと時計を見やればもう少しで針が何時もの予告時間を指そうとしていた。
『…3…2…1……ぜろ』
丁度長い針が12を指した瞬間、家のブレーカーが落ちる。裏口からはピッキング音。彼らの得意とする音が聞こえる。
こんな状況でも彼らの音だと安心してしまうようになったのだから我ながら驚きだ。
「Aちゃん。」
すぐ後ろから、声がした。
振り返るといつも以上にぴしっと怪盗服を着た鬱が佇んでいた。
「こんばんはAちゃん。今夜も月が綺麗やね。」
そのまま私へと手を差し伸べる。
私はキザなセリフに苦笑しながら手を取った。少し震えた白手袋の手。あまりにも、優しいひと。弱いのに、庇おうと、痛みを背負おうとしてくれた。愛しいひと。
『…死んでもいいわ。…私と一緒に死んでくれる？』
お決まりのセリフに、少しだけ欲望を孕ませて応える。
「勿論。」
少し泣きそうな顔で鬱が答えた。
『私がおばあちゃんになっても捨てないでね。』
「そんなことせんわ。死んでも絶対に離してやらんからな。」
私の手を取ったまま、夜空の下に出る。
あの日のような綺麗な満月。
『そんなに独占欲強かったっけ？』
「Aちゃんやからやな。あーあ、エーミールのこと言えなくなってもうた…。でも、まぁ、うん。俺が勝てたんやな。…逆に俺でええん？」
『何回も言わせないでよ。…あいしてる』
「っ……！！やばい、俺いま世界一幸せかもしれん…」
『これからもっと幸せにしていくんだよ。』
「おん。二人で。な？」
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作者名：一 | 作成日時：2022年12月14日 12時
