CHERRY. *sho sakurai* (ページ30)

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30.愛と勇気と… ページ30

クリスマスのデコレーションがされたチェリーパイが二つ運ばれてわたし達の前に置かれた。

A「わぁ…。かわいい。」

なんか食べるのがもったいないな。

翔「クリスマスバージョンだ。もうすぐクリスマスだね。」

そう言って笑う翔クンを見る。

長い前髪の間からキラキラした瞳が覗く。

翔「Aチャンのクリスマスの予定は？」

A「とりあえず…、仕事(笑)
翔クンは？」

翔「俺も仕事だな(笑)なんだ、お互いさみしいなー。」

眉を下げて笑う翔クン。

どうしてわたしはこの人とこんな素敵なレストランでクリスマスデコレーションのチェリーパイを食べてるんだろう。

翔クンは

どうしてわたしを誘ってくれたんだろう。

A「あの…。今日は、ありがとう。翔クンも忙しいのに…。」

どうしてと聞けないわたしは、ひとまず忙しい中時間を作ってくれたことにお礼を言った。

翔「…さくらんぼみたいって、思ったんだよね。」

A「え？」

急に静かに話しだした翔クンを見ると、フォークでパイの中の赤く煮詰まったチェリーをすくう。

なにが

さくらんぼみたい？

翔「Aチャンの赤い靴がね。もう一度会いたいって思っていたら、偶然会えたからさ。なんか、気になるんだよね。」

それって…

わたしはどう受けとればいいのかな。

翔「って言っても信じてもらえる？
この状況に戸惑ったりしてるのかなって思ったから。
って、余計ワケわかんないか(笑)」

と、笑う翔クンにわたしも笑って俯くしかできなくて。

翔「飲んじゃったから、タクシーだけど、送るよ。」

チェリーパイを食べ終わると翔クンが言った。

A「そんな、大丈夫大丈夫。駅から近いし…。」

わたしが両手を振ると

翔「いやいや、俺が誘ったんだしさ、お送りしますよ。…姫。行こうか？」

さらりとわたしをあしらう翔クンにドキドキしながら

階段を降りる翔クンの後を追った。