19.うたたね ページ19
りんごを剥いてリビングのテーブルに置くと、
頬杖をついてすぅすぅと寝息をたてている翔クン。
福岡で3日間コンサートしてきたって言ってたっけ。
そして朝東京に戻って、ここにもテレビ局から来てくれて、この後生放送？
なんてハードなんだろ…。
疲れてるんだろうな。
後、30分は大丈夫って言ってたから、少し寝かせてあげられるかな。
翔クンの肩にブランケットを掛けて、わたしも自分が座っていた場所に座る。
寝てるから、いいよね…。
起きてる時は中々見れなかった端正な顔立ちをマジマジと見る。
綺麗な眉。
長いまつ毛。
形のいい鼻。
羨ましいほどの真っ赤なくちびる。
女のわたしがみても綺麗という言葉しか思いつかない。
なんで、こんな人がウチでうたた寝してるんだろ…。
わたしはまだ、この綺麗な顔立ちの人を夢だか現実だかわからないまま暫く寝顔を眺めていた。
そろそろ起こしたほうがいいかな…。
そう思って翔クンの肩を軽く揺する。
A「翔クン…？翔クン。」
起こすのも可哀想で声が小さくなる。
長いまつ毛の瞼がそっと持ち上がると
バッと顔をあげた。
翔「ゴメン！俺、寝ちゃったんだね…。」
と、いいながら片手で顔をなでる。
A「翔クン、疲れてるんだよ。」
翔「はは。ちょっと寝たら頭がスッキリしたな。」
A「じゃあ、よかった。」
翔「ごめん…。もう、行かなくちゃ。りんご、せっかく剥いてくれたのに…。ごめん…。」
ギリギリまで声かけなかったから。
わたしはキッチンへ行ってタッパーに入れたりんごを靴を履く翔クンに渡した。
A「これ、時間があったら食べて？」
翔クンの前に差し出すと、ちょっとびっくりした顔をしたけど、直ぐに優しく笑って
翔「ありがとう…。」
と、受けとってくれた。
翔「入れ物は、返すね。」
と、言われてハッとして
A「あっ、そうゆうつもりで入れたんじゃないの！100均の入れ物だから捨てて？」
また、翔クンに来てもらう口実みたいに思われちゃうと思ってわたしは両手を振って取り繕う。
余計なコトしたかな…。
恥ずかしい。
翔クンの顔を見れなくて少し下を向くと、
翔「でも…、また、来てもいいかな。」
思いがけないその言葉にわたしは翔クンを見て頷くのが精一杯。
また
来たいと言ってくれる翔クンが眩しい。
もしかしたら
やっぱりこれは夢かもしれない…。
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作者名：茉莉
| 作成日時：2012年11月23日 23時
