CHERRY. *sho sakurai* (ページ9)

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9.近くて遠いページ9

あの日から

翔クンはマメにメールをくれるようになった。

今日の撮影は外で寒いとか
お昼ご飯はお蕎麦を食べたとか

ろくに顔も合わせたことがないのに
他愛ない話をメールしていると翔クンをすごく近くに感じて、もうずっと前からの知り合いみたい。

仕事中は全く携帯を開けないから、子ども達の降園後、少しの空き時間に携帯を見ると翔クンからのメール。

今日もお仕事。

本当に忙しいんだな…。

翔クンは自分の事も仕事の内容もあまりメールでは話さない。
当たり前か。

だからわたしも質問はしなかった。

今どこ？
誰と一緒？
なにしてる？

なんにも知らない人なのに何も聞けないでいた。

芸能人ってわかんないし。

聞いてはいけないような気がして。

だけどわたしが一番気になったのは翔クンも何も聞いてこない。

これから打ち合わせとか。
スタッフ君に貰ったクッキーが美味しいとか。
今日は蕎麦より生姜焼きの気分とか。

その時の他愛ない会話にわたしへの質問はなかった。

あんまり興味無いのかな。

そもそもわたしの名前さえ知らないし。

わたしの仕事も聞かれてもないのに言うのも…。

翔クンを近くて遠い存在に感じてわたしはメールを開いた。

ーーーー

今日は久々にゆっくりの出発で

家でコーヒーなんか飲んでます。

そっちはもう仕事だよね？

改めて確認なんだけど、

俺はなんて呼んだらいいかな？

桜井さんって同じ名前だし、
かと言っていきなり名前でよんだら失礼かな？

ーーー

A「ぶっ…。」

翔クンからのメールに思わず吹き出した。

改めて確認って…
なんか、カタイなぁ(笑)

興味がなかった訳じゃないんだなって
何となく…
やっと聞いてくれた感じがして

近くて遠かった彼が少し近づいた。

ーーー

翔クンの好きに呼んでいただけたら。

っていうか、聞くの遅っ！(笑)

ーーー

って、ちょっと近くなった彼に親しみを込めて突っ込んだ。