CHERRY. *sho sakurai* (ページ15)

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15.受話器越しの声ページ15

定時に園をでて早めの帰宅。

昨日のポトフを温めながらナオにご飯のお誘いのメールを打っていると、

着信を知らせるバイブ。

知らない番号。

恐る恐る通話ボタンを押した。

A「…もしもし？」

『あ、よかったー！櫻井です。』

A「ええっっ！？」

ガチャン！

A「きゃあ！」

思いもかけない人からの電話に素っ頓狂な声をだして、

それに慌てて手から携帯が滑り落ちた。

慌てて携帯を拾う。

A「ごっ、ごめんなさいっ！」

翔『ふはは。どうした？大丈夫？』

初めて聞く受話器越しの声…。

A「だ、大丈夫…です…。」

……。

翔『…今、どこ？』

少しの沈黙の後、ちょっとトーンダウンした翔クンの声。

A「あ、今…、自宅…です。」

メールでは敬語なんて使ってなかったのに、直接こんなに話すのは初めてで敬語になってしまう。

翔『なんか、よそよそしいなぁ(笑)』

A「ごめん…。なんか、電話、初めてだから…。」

メールとかわらない翔クンの口調にそれも心地悪くてちょっと敬語を外す。

翔『だよな。ごめんな？突然。…あ、じゃあ、今から行っていいかな。お土産渡すだけだから。』

A「えっ？」

断る理由もなく、
むしろずっとメールしてたから会いたくなってるわたしがいた。

A「わたしは大丈夫だけど…。翔クンは大丈夫？帰ってきたばかりなんでしょ？」

翔『いや、東京には朝帰って来て、今番組の打ち合わせが終って始まるまで空き時間なんだ。』

A「忙しいのに…。」

翔『大丈夫だよ？それに、お土産、賞味期限があるから。』

A「あ！わたしが美味しいものなんて言ったから…。ごめんなさいっ。」

翔『はは。…っていうのは口実。住所教えてくれる？』

口実…？

そこに突っ込む隙も与えず翔クンはウチの住所を聞いてきたから、わたしも聞き流して住所を教えた。

翔『そこなら30分くらいで着くな。』

そう言って翔クンは電話を切った。

翔クンが来る…。

ウチに？

嵐が？

手の中で再び現れたメール画面では

ポトフを大量に作り過ぎちゃって…。
食べに来ない？

と、ナオへのメール。

A「ナオ、ごめん…！」

送信ボタンを押さずにわたしはそのメールを消去した。