梅色の声優彼氏さん2wei【梅原裕一郎】

佐藤の知らない塩見さんside斉藤 ページ40

斉藤「ねぇ……いつまで読んでるの、それ」







塩見「文句言わないでよ、誘ったのそっちでしょ」






正論で返されて何も言えなーい。








現在、中古の本屋さんで塩見さんは少女漫画の立ち読みをしている。
かれこれ一時間弱。
長い。








なんとか気はそらせたものの、いくら本がたくさんある場所とはいえこのまま塩見さんに付きあってたら俺のメンタルが削られていく。







斉藤「やっぱり塩見さんは恋愛してるよりも少女漫画みたいな安っぽい物の方が似合うよ」







塩見「なんかすっごいムカつく。まぁ大学時代とか学校サボって少女漫画読みに古本屋来てたけどね」









斉藤「え、親とか何も言わなかったわけ？」









塩見「＿＿＿＿＿＿＿＿＿べつに」









塩見さんの顔があからさまに曇った。









斉藤「……？」









塩見「っ、そんなことより読んでみてってば」









この少女漫画すごく感動するんだから！と興奮気味に語る塩見さんを背にして本を探す。









斉藤「はいはい嫌です」





てきとうにあしらって自分の読書を再開した。





次はどの本がいいかな。






＿＿＿＿＿大学サボってても何も言わない親。





そして、塩見さんの暗い顔。







斉藤「＿＿＿＿＿塩見さん、塩見さんの親ってもしかして………」





言いながら振り返った。





ばたり。





ばたり？





振り返ると塩見さんが倒れていた。





比喩はない。





斉藤「しおみ、さ……？」





苦しそうに胸を押さえている。






斉藤「塩見さん！！！！」





駆け寄って声をかけても反応がない。





本を読んでいた周りの人たちも集まってくる。





斉藤「すみません！救急車を……！」





通行人「私が呼びます！」





斉藤「ありがとうございます…！」





いや、塩見さん。今死なれても困るから。





まだいろいろ聞かなきゃいけないことが＿＿＿＿＿






塩見「＿＿＿＿＿…………い」







塩見さんの口が少しだけ動いた。







斉藤「＿＿＿＿＿え？」







塩見「＿＿＿＿＿また、………迷惑かけてる……………………ダメな子で、ごめんなさい＿＿＿＿＿」







ダメな子で、ごめんなさい。





塩見さんはたしかにそう言った。






そして、塩見さんはそれ以上何も発しなかった。






＊

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