記憶7 ページ7
キスでもしてしまうのではないかと言う、近さ
痺れを切らし、声を掛ける
「ち、近いです。止めてください」
顔を真っ赤にしながら、この距離でそう伝えるのは、なんとも恥ずかしい
「済まなかった」
という、彼の顔もまた赤い
やった本人が赤いとはどういうことだ
「国木田君が来る前に君に伝えなきゃいけないことがあるんだ」
まるで、私の正体を知っているかのように彼が言う
てか、国木田君居たの
と言うか、逃げなくては
正体がばれているなら尚更
でも伝えなきゃいけない事って?
大事な話みたいだけど
それでも、正体がバレるよりはと席を立つ
「すみません。私達初対面ですよね?きっと勘違いしてますよ」
そう言い後ろを向き一歩踏み出した
「待って」
治が私の腕を掴む
中也は騙せても、治は無理だ
治は頭が切れるのだから
「離してください」
彼の目を真っ直ぐに見つめて言う
「私の話を聞くまでは離さないよ」
「そう言われても困ります」
「ねぇA」
名前を呼ばれた瞬間、天と地が引っ繰り返ったように感じた
此処で変に返せばもう逃げれない
この時点でもう無理なのかもしれないが
「人違いでは?」
彼が怪訝の目で私を見る
「人違いはしてないよ。何故なら君を追いかけて此処まで来たのだから」
「え......?」
どういうことだ
私はボロを出していない筈だ
なのに何故?
「中也にAに似た人を見たって言われてね、調べてみた。そしたらこのホテルがhitしてね」
黙って聞く私を良い事に治が話を進める
「私を騙せるとでも思ったかい?私は君の恋人だったのだよ?」
恋人だったという言葉に下に下げていた顔を上げる
「やっと上を向いたね、A」
「治...」
坂口さん、ごめんなさい
バレテしまいました
しかも、横浜に来た初日に
「大丈夫、他の皆には話さないよ」
「どうして...?」
「だって、安吾と約束したのだろう?」
「何故、坂口さんを」
私から出る言葉は全部疑問で、其れを治は淡々と答えていく
「君の今の現状は全部調べた。それに、安吾は私の旧友だからね」
あ、記憶も全部あるのだろう?
と聞いてくる治
それにコクリと頷き返す
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