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tn「…で？具体的に何を覚えてへんの？全部やないんやろ？」
一頻りデカい声で叫んだ後、頭痛がしますと言わんばかりに頭に手をやりながらトントンが見下ろしてきた。
この人僕が病み上がりやって事忘れてません？
薬品の独特な匂いがツンと鼻を刺激する病室は、後方支援がメインである自分とは割と縁遠いものである。
見舞いでしか足を踏み入れない場所であった此処の匂いが、実は少し苦手だ。
tn「だーいせんせい？」
ut「あっとごめんなぁ。えっと…、」
起き抜けだったのも相まってぼーっとしていた所に、じとりと視線が突き刺さる。
目の前の怖い書記長様ことトントンの事は覚えてる。
あとはそうやな…。
ut「うーん…俺はこの国の軍部の偉いさんで…めっちゃ仕事の出来る有能で…仲間と部下と女の子にめちゃくちゃ愛されてて…、」
tn「……あかん、重症やな…。」
ut「ちょっ酷ない？！そんなこの世の終わりみたいな顔せんとってや！」
冗談ですやん！と声を張り上げたは良いものの、これってなんだか自分を否定したみたいで虚しくないか。
tn「お前ほんまに記憶喪失か？まさか仕事サボる口実ちゃうやろな。」
ut「流石にそんな不謹慎な嘘つかんて！信じてトンちぃ〜！！」
あかん、日頃の行いが災いして全く信用してくれへん。
けれど、口では説明しにくい何か。
心臓の辺りがぽっかり空洞になったような感覚が起きた時からずっとしている。
はっきり言えないけど、自分は何かを忘れている…筈なのだ。
ps「お、起きたばっかで体調どんなかと思ってたけど、そんだけ声出てれば大丈夫やな。」
べそべそトントンに向かって訴えかけていると、キィと音がして部屋の扉が開いた。
2人して音の方を見ると、この部屋の主人である男がひょっこりと顔を覗かせていた。
ps「水持ってきたけど、大先生飲める？」
ut「おん、ありがとな______…？」
tn「どないした？」
ちょっと待て。おかしい。
僕は目の前の男を知っている。
軍所属の医者で、酒と男が大好きで、何があっても大体大らかに笑っている姿を、覚えている筈なのに。
tn「…お、おい、まさかお前…。」
ps「？大先生どうしたん？調子悪い？」
目の前のトントンの顔が青い。
きっと自分も同じような顔色なのだろう。
心配そうに投げかけられた言葉に力なく首を振ってぎこちなく笑う事しか、その時の僕には出来なかった。
ut「えーーっと………すまん、名前…なんやったっけ？」
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すみれいん(プロフ) - 「かぎかっこ」さん» これからも展開がどうなるのかワクワクハラハラしながら読みたいと思います！ (2020年5月23日 21時) (
レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
「かぎかっこ」(プロフ) - すみれいんさん» コメントありがとうございます！視点を隠しながら文章書いてみたかったので考察して頂けるの嬉しいです。"先輩"が結構出張りますが、これからもお楽しみに！ (2020年5月21日 16時) (レス) id: af5934532f (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - ？？？sideと言ったら良いのでしょうか…亡くなってる…え…待って…この？？？sideって…と予想を付けながら現実？になって欲しくないとも思いながら、更新を楽しみに読ませていただいてます。 (2020年5月17日 20時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：「かぎかっこ」 | 作成日時：2020年5月11日 13時
