57 ※ジコ ページ7
個室に戻るとAがいない
暫く待っても戻ってこない
まさかと思うけどさっき会ったヌナが頭を過ぎってどうも落ち着かない
酒、来ねぇーし‥探すか
Aに頼んだ酒を口実に個室を出る
ウロウロしながら店の通路を行ったり来たりしてみてもAは一向に見つからない
小さな胸騒ぎを感じながら、さっきヌナに会った方向へ足を進めた
この店はちょっと変わった作りになってて、店の中心にあるトイレ迄、各個室からいくつもの通路が交差して繋がってる
ちょっとした迷路みたいであまり他の客に会わないから俺らみたいな人間には好都合
けど人捜しには向いてない(苦笑)
暫く歩いてると通路に蹲る人、発見
ジコ【ヤー、頼んだ酒は?】
俺の声に顔を上げたAを見た瞬間、その顔色の悪さに焦った
酔ってるのとは違う
俺を見る瞳はボンヤリしててまるで焦点が合ってない
その虚ろな目からは生気を全く感じなかった
熱でもあるのかと触れた頬が酷く冷たかった
すると俺の手にAが自分の手を重ねて消えそうな声で呟いた
私【‥ウジホ..助けて】
Aはフッと悲しげに微笑むと視線を落とした
伏せた目の濃くて長い睫が頬に影を作って
感情がない抜け殻みたいな無表情の顔が綺麗だと思った
Aはあまり自分の感情を出さない
俺の前で泣きはするけど理由は言わないから
慰めたくても何も出来ずにいつもただ黙って一緒にいるだけ
泣ける内はまだイイ
人はあまりにツライと泣く事すら出来ない
‥今のAみたいに
とにかく何があったか知らないけど、このままココには置いとけない
ジコ【‥送ってく。帰r..】
ユグ【何してんの‥】
後ろからの声にビクッと肩を竦めると、Aは重ねてた手で俺の手をギュッと握りしめた
声に目を向けると後ろにヌナを従えたユグォンがムッとしてる
二人を見てAが抜け殻になった理由はすぐわかった
同時にタイミングの悪さに無意識に小さく舌打ちが出た
ジコ【‥A、飲み過ぎたらしいから先に帰るゎ】
Aを強引に立たせるとフラッと蹌踉めいて慌てて抱きしめる
ユグ【俺が送ってくk..】
ジコ【ヌナの事、送ってけ‥】
ユグォンの言葉を遮った俺はAを支えてすぐにその場を離れた
俺が酒なんて頼まなきゃ、Aは余計なモノを見なくて済んだと思うと
俯きヨロヨロ歩くAに悪い事をした気がして、小さな溜息が出た
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作者名:gyuuuu x他1人 | 作成日時:2015年4月3日 21時