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「ちょっと!!待ってください!」
「なんや!!もうエエやろこんなボロ道場。借金だけ残して死にさらしたバカ親父に義理なんて通さんでエエわ!!捨ててまえこんな道場・・・」
天人がそう捲したてると、堪忍袋の緒が切れた妙が天人を殴り飛ばした。
「この
「このォ、ボケェ・・・女やと思って手ェ出さんとでも思っとんかァァァ!」
妙に殴られた天人が拳を振り上げる。雅は咄嗟に妙を押さえつけていた男を突き飛ばし、妙を抱きしめて痛みを待った。
(あれ?痛くない?)
雅が恐る恐る顔をあげれば、銀時が天人の振り上げた拳を掴んでいた。
「その辺にしとけよ。ゴリラに育てられたとはいえ女だぞ」
「なっ・・・なんやワレェェェ!この道場にまだ門下生なんぞおったんかイ!!・・・もうエエわ!道場の件は・・・
せやけどなァ、姉さんよォ。その分アンタに働いて返してもらうでェ」
冷静さを取り戻したらしい天人が懐から1枚の紙を取りだした。
「コレ。ワシなァこないだから新しい商売始めてん。ノーパンしゃぶしゃぶ天国ゆーねん」
「ノッ・・・ノーパンしゃぶしゃぶだとォ!!」
「まァ道場売るか体売るかゆー話や。どないする」
「分かりました。行きましょう」
妙はすっと立ち上がると、自らの足で天人の方へ歩いていく。新八は堪らず妙を呼び止めた。
「新ちゃん、あなたの言う通りよ。こんな道場護ったっていい事なんて何も無い。苦しいだけ・・・でもねェ私、捨てるのも苦しいの。
どうせどっちも苦しいなら、私はそれを護るために苦しみたいの。」
新八は何も言い返さなかった。否、言い返せなかったのだ。あんなに苦しげな姉の顔を見てしまったら。
「そこの嬢ちゃんも上玉やなァ。それも連れてこい」
天人は妙の肩を抱きながら雅を品定めするように見回すと、一緒に来ていた奴らにそう指示をした。
天人に腕を捕まれ立たされると、雅はその腕を振り払った。
「自分の足で歩きます。」
「なっ・・・オイ!雅!!」
雅は少し振り返って銀時を見やった。その表情は穏やかで、ただ真っ直ぐに銀時の目を見つめていた。
とても、売られた人間の顔には見えなかった。
(きっと助けに来てね)
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作者名:p.m. | 作成日時:2024年3月14日 17時