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「俺が、憎いだろ」
自らを嘲るような笑みを浮かべ、雅の言葉を待つ。雅は、何も言わなかった。
「お前の身体に一生消えない傷跡を残して、松陽だって・・・」
「そうね、憎いわ。とっても。」
「・・・」
覚悟はしていたつもりだった。雅から恨まれても、それでも耐えられると思っていた。
だけど雅の口からそう言われると、どうしても胸が傷んだ。
「この傷も先生の事も、その咎を全部一人で背負って何も言わずに勝手に居なくなって・・・少しくらい、分けてくれたっていいじゃない」
その言葉に、銀時は弾かれたように顔を上げた。久方振りに見た雅の笑みは苦しげで、だけどその瞳は慈愛に満ちていた。
ゾッとする程の、どこか浮世離れした美しさだと思った。
「俺ァ、てっきり仇討ちでもしに来たのかと思ったよ」
「それがお望みなら、介錯くらいはしてやるさ」
風で雅の髪が揺れる。銀時はその濡れ羽色に手を伸ばした。
「相変わらずキレーな髪だな」
「髪は女の命だからね」
そこには昔と変わらない、花のような笑みを浮かべた女がいた。
「なんだい、アンタ達知り合いだったのかい」
「お登勢さん、ご気分いかがですか?」
「酷い二日酔いさ。今日は朝餉は要らないねェ」
「だろうと思って、買い物をしてきたんです。台所をお借りしてもいいですか?」
雅はスナックお登勢の台所を借りると、しじみの味噌汁を作ってお登勢に振舞っていた。
「お登勢さん、昨晩は本当にありがとうございました。」
「良いんだよ、あれくらい。しかしアンタ、いい嫁になるねェ」
「 もう、お登勢さんたら。銀時もほら、食べな」
「ったく、いつの間に仲良くなったんだか。」
そう言いながら雅の作った味噌汁を食べる銀時の表情は柔らかかった。
───あの再会から、数ヶ月。
私は銀時の誘いで万事屋に就職した。
家は万事屋の近くを間借りして、毎日通っている。
銀時は一緒に住めばいいと言うが、いい大人が男女2人ひとつ屋根の下など言語道断である。
雅はその辺りの教育をしっかりと受けた、れっきとしたお嬢様育ちだった。
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作者名:p.m. | 作成日時:2024年3月14日 17時