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「おや、嬢ちゃんが1人でこんな所に雨宿りかい?」
「嬢ちゃんだなんて、私はもう若くないですよ。」
「アタシよりは余っ程若いさ。さて、酒を飲みに来たんだろ?」
「ええ。お願いします。」
女─本多雅は店の中を見渡すと、銀髪の男がカウンターに突っ伏して寝ているのを見つけた。
「あの、女将さん。こちらの方は・・・」
「お登勢でいいよ。」
お登勢は酒を作り終え、振り返って銀時の姿を目に収めた。すると困ったようにため息をついて雅の酒を置いた。
「この上に住むプー太郎さ。・・・ちょうど良かった。来たばっかりで悪いけど、こいつを運ぶの手伝ってくれるかい?」
「はい、構いませんよ。」
「いつもは放り出しておくんだけど、今日はどうも様子がおかしくてねェ・・・」
上の階へと続く階段を1段ずつ登りながら、お登勢は言った。雅は目を閉じた銀時の顔をちらりと盗み見た。
(この人、もしかして──)
「それにしても、髪の毛綺麗だねェ」
「ありがとうございます。髪は女の命ですから。」
雅は嬉しそうに自身の髪に触れた。
無事に銀時を万事屋に送ったあと、客も来ないだろうし2人で飲まないかとお登勢に誘われ、雅とお登勢は2人で酒を酌み交わしていた。
どれくらい経っただろうか。雨足も弱まり、そろそろ店を出ようと雅は立ち上がった。
「今日は朝までここに居な。」
「え?」
「アンタ、見たところ良家の奥様って具合だろう。ここらじゃ見ない顔だし、何よりアンタの着物。上等な物だろ?」
「でも・・・」
「かぶき町はちょいと治安が悪くてね・・・タダでさえアンタみたいな別嬪、昼間でも危ないさ。」
お登勢の有無も言わせぬ言葉に、雅は椅子に座り直した。
「それじゃあ、お言葉に甘えて。」
「いいんだよ。潰れるまで付き合ってやるさ。」
「アタシの旦那は昔に死んじまってね。こんなシケた日に1人で飲むのは飽きてきた頃なんだよ。」
お登勢はそう言い切ると、持っていた酒を煽った。
「お登勢さん。実は私、今日が誕生日なんです。だから、1人で飲むには少し寂しくて。ここに来て、お登勢さんのお店を選んで、良かった。」
実の所、雅が「スナックお登勢」を選んだのは、ただの偶然では無かった。
この2建物に大きくかけてある、「万事屋銀ちゃん」の看板が目に付いたのだ。
脳裏を過ぎるは、鈍く光るあの銀色の。
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作者名:p.m. | 作成日時:2024年3月14日 17時