高学歴は面倒くさい恋をするか。 (ページ7)

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遺影はプリクラ。【ko】ページ7

こうちゃん×貴方

こうちゃんside

「遺影、プリクラにしたいな」

真っ白な病室の窓から外を眺める、真っ白な彼女。

変なことを言う彼女だが、余命は一ヶ月。

こ「多分辞めた方がいいよ」

「じゃあSNOWで盛って欲しいな、ノーマルは嫌」

こ「遺影はノーマルにしなよ、それに」

加工しなくても十分可愛いよ。

彼女に影響されたのか、自分らしくないことを思ってしまった。いや、実際そうなのだが。

それとも、遺影なんて言うから彼女との別れが少しリアルになって、怖くなったからだろうか。

彼女の病気を知ったのは、告白した3ヶ月前。

『私、病気なんだよねー。余命があと半年？かな。
だから、私なんて辞めた方がいいよ。

お別れする時寂しいでしょ？だから、私もう恋人つくらないんだ

好きになってくれてありがとう。私も、好きだよ』

へら、と笑っているのに目から涙がこぼれそうで、声が震えていた。

恋人になってから、彼女の余命は一度だけ短くなった。

「それに、何？」

こ「いや、それはよくて」

「良くないよ、言って」

こ「…加工しなくても可愛いよ、」

彼女に聞かれるのがやっぱり恥ずかしくて、早口でぼそっと呟いた。

「聞こえないよこうちゃん、もっと腹から声出して！」

こ「………だから、加工しなくてもAは可愛いってば！」

「え、？」

あーあ、こうなるから嫌なんだよな。

本当に、

元気に俺を煽って、
真っ赤になって照れて、
「遺影はプリクラ」なんて変なことを言う彼女は

いなくなってしまうのだろうか。

こ「本当に、いなくなっちゃうの？」

「うん、いなくなっちゃうよ〜」

俺が持ってきたお菓子を覗き込みながら、外に吹く風のように緩やかに言った。

君がいなくなるのはまだ怖いけど、
君がいなくなるはずの春を泣いて過ごすのは、
一度だけにしておくよ。

「だから、そっち持ってってば〜」

こ「まだこっちの皿が…」

「お皿なんて後でいいよ！」

はあ、とため息をついて、持っていた皿を置いた。

君がいなくなるはずだった春に、
元気な君と荷解きをしているのは、
奇跡ということにしておこう。

「もー、早く！」

こ「わかってるって！」

だからもう、遺影をプリクラにするなんて言って困らせたり怖がらせたりしないでよ。

君がいなくて泣く春なんて、無くていいからね？