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一瞬、空白。
頭の中が真っ白になって、錆び付いた歯車の如く思考は鈍く停止した。
思わず肘掛けに置いていた手を浮かせる。
どうして、"彼"が、
…グルッペン・フューラー総統が。
客の同情を買う為のささやかな演出として、頭から被せられた白いローブと身に纏うシャツ、そしてその陶器の様な肌は靴墨に汚れている。
それでも重苦しい枷と首輪に繋がれたその姿は何と美しいことよ。あぁ、これは周りの奴等もこぞって手を上げるに違いない…
…いや、見惚れている場合じゃない。これは一体どういう事だ。死んだ国家の権力者が売りに出されているのはそう珍しくない。
だがかの国は……我々国は、滅んでなどいない。
なのにどうして、その国家元首があんな…惨めたらしいことに。
オークショニアの彼に関する商品説明、そこから巻き起こる観客のどよめきと、さざ波のように立つ下卑た笑い。
「それでは、1000万からスタートです！」
オークショニアの掛け声と共に、待ちくたびれたとでも言うように会場内は沸き立った。
「1500」
「2000！」
「2100」
「1億！」
「2億！」
…この闇オークションの目玉商品が、もしも人間だったのならば。
私は特段値を張ることもなく、黙ってその場を去るつもりだった。
私は奴 隷も、閨の共も必要としていないから。
人間なんて買っても、邪魔になるだけ。
「4億！」
その考えを放り出してまで、私が今尚ここに留まるのは、
『__________…8億』
金を消費するという目的の他にも、
…"意地でも彼を買い取らねばならない理由"
が出来てしまったから。
「！？
誰です、今の金額を言ったのは」
『別に誰でもいいだろ。
………他に、値を張る者は』
「き、9億！」
『10億』
会場の隅から声が響いたが、すぐさま上がった数値も塗り替えられる。
10億。その一線を画す金額に対抗する者は現れない。
会場は、完全なる静寂に帰した。
『…よし』
『その男、私が貰い受ける』
壇上の彼がふと、その赤い眼差しで私を刺した気がして、
美しいそれから、暫く目が離せなかった。
・
オークショニアの終いの挨拶にて今宵の商売は締め括られ、商品の購入者だけがそれぞれ別室に案内される。
只今商品を連れて参りますので、と恭しく礼をする黒服の男を見送って、
私は総統サマ、そして、
"とある知人"の顔を浮かべ、
憂いの息を吐いた。
『…ちょっとばかし、城の警備が甘いんじゃないのか』
『なぁ…、？
我々国軍幹部の諸君』
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お月様 - 滅茶苦茶おもろかったです！待ってたけどようやく27話でロボロさんの所出た！続編おめでとうございます！ (2021年1月2日 17時) (
レス) id: b347abc4d4 (このIDを非表示/違反報告)
セツナ - 火ぃつけろ火ぃぃぃぃ！！！wwww腹筋バキバキになったんですけど腹筋返して（）神様お疲れ様です！ (2020年5月26日 21時) (レス) id: 274ac26baa (このIDを非表示/違反報告)
しゃち - 43の最初にある有限実行の“限”は“言”ではないでしょうか？勘違いでしたら申し訳ございません。ラットさんの作品大好きです！ (2020年4月16日 13時) (レス) id: 6540cc437a (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - うますぎませんか！？画力をわけて！！更新頑張ってください！！応援してます！！ (2020年4月3日 23時) (レス) id: 5db7ec7919 (このIDを非表示/違反報告)
楓@卍教 - 絵も文もうまいだと…？神…？いや天才…？(錯乱)まじで好きです応援してます (2020年3月21日 15時) (レス) id: 84c734c3e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ラット
| 作成日時：2019年11月16日 21時
