天才105 ページ9
目の前で風に吹かれるAは、こくりと眠そうに首を傾けた。その瞼は既に閉じられており、俺は彼女の小さな身体を抱き上げ、室内に戻る。
「…部屋まで運ぶ。寝てもいいゾ」
彼女は少し抵抗する素振りを見せたが、眠気には敵わなかったようで、やがて俺の腕の中で体の力を抜いた。
全く、無防備だ。
総統室から暫く歩いて到着した彼女の部屋のベッドに、その細い身体を横たわらせる。黒い髪の毛を撫でた。
俺は、先ほど彼女と交わした言葉の一つ一つを、脳内で反芻する。
自ずと答えは出てくる。
彼女が何をしでかそうとしているのか。
彼女は死してこそ、自分の名誉が守られると思っているのだ。
だから彼女は死を恐れない。
いや…
むしろ彼女の死を恐れているのは、紛れもない、俺達の方だ。
「____死なせはしないさ。お前は俺のものだ」
首に残る痣に触れ、眠っている彼女にそう呟き、俺は瞼を閉じた。
・
「そろそろ芝刈んないとなぁ」
朝、部屋を出て食堂に向かっていると、偶然ひとらん様と出会った。
彼は窓の外に視線をやる。
つられるように見ると、確かに裏方の芝が伸びてきている。
いや、しかし
『あそこの芝刈りって必要ですか？』
率直に疑問に思ったので聞いてみる。
あそこを通る人なんて見たことがないが…
「ブービートラップを仕掛けてあるんだ」
『…』
何だかすごい単語が聞こえた気がする。
私は思わず彼の利発そうな瞳を見つめた。
「芝が伸びて作動に支障をきたすと不味いから…」
『な、成る程…』
絶対にあそこには行かないようにしよう。
ふと、私は１つの閃きを得た。
脳内の霧を払うようにして、私の先の未来を明るく照らすような感覚。
突然押し黙った私を訝しむひとらん様を置いて、ロボロ様の元に走る。
情報管理室。ここいるはずだ。
扉を２度ノックすると、中から彼の声がした。
入室を促された私は、そのまま扉を開ける。
「どうしたの、Aちゃん」
彼は突然の私の訪問に驚きを隠せない様子だ。
私は言う。
『ロボロ様…
……城の敷地の地図を、下さい』
彼が息を呑む気配。
ロボロ様は少し迷う素振りを見せたが、やがて頷いた。
「…いいよ」
彼はファイルから一枚の紙を取り出す。
それを渡された私は礼を言い、部屋から出た。
・
「ｻﾞｻﾞ________
…皆、聞こえてる？
Aちゃんが動いた。城の地図を持ってったんだけど、多分スパイの逃走経路にアテが出来たんだ。
注意して」
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あいまいアイン(プロフ) - 度々読み返しにきてしまう... (4月12日 12時) (
レス) @page10 id: cc2cd4c541 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - いやもう好きすぎてなきそう (10月2日 15時) (レス) @page9 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ミルク(プロフ) - 久々に見返しに来ました。何度読んでも飽きない天才ちゃんと主役達の掛け合いやストーリーの展開が大好きです！ラット様の気持ち次第になると思いますがこの世界が再び動き出すのを楽しみに待っています。 (9月19日 13時) (レス) @page9 id: 921529831b (このIDを非表示/違反報告)
あいまいアイン(プロフ) - 久々に見返しにきました。皆さんとのやりとりや思惑が蠢いていて楽しかったです。いつまでも更新をお待ちしています！ (5月11日 16時) (レス) id: cc2cd4c541 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - お願いします何億でも持ってくるので更新してください続きが読みたいです土下座します頼みます一生のお願いです素晴らしかったですありがとうございます†┏┛墓┗┓† (2022年12月3日 3時) (レス) @page9 id: d250e097ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ラット
| 作成日時：2019年4月11日 22時
