天才102 ページ5
『貴方への屈服をはね除ければ、貴方は私を殺すでしょう？』
私がそう言うと、総統は口元に手を当て喉をクツクツと鳴らした。
熟れ落ちた柘榴のような紅が私を見る。
「いやはや…よもやバレていたとはな」
『普通に考えればそうでしょう。
忠誠を誓わない駒なんて必要ないですから』
「あぁ、そんな風に思っていたのか。心外だな…
俺は自分の手で殺したお前を、永遠に美しい姿のまま飾ろうと思っていただけなのに」
…本当に、悪趣味の帝王のような男だ。
コイツやはりただの変態か？
屈服するだけの価値を見出せない。
『はぁ…いよいよ貴方に忠誠を誓うなど無理な話です。残念ながら死後の処理には先約があるんですよ』
「ほう…」
不機嫌そうに眉間にシワを寄せる彼の表情を楽しみながら、私は頬杖をつく。
『私が死んだら、弔いに貴方が育てた花を添えてくれと伝えておきました。ひとらん様に』
「気に食わんな。その約束、すぐに破棄しろ」
『嫌ですよ。…ところで、このまま私が駒を進めれば24手目にチェックメイトですが』
そう言うと、総統は再びチェス盤に目を戻した。何やら真剣な顔で盤上を睨み付けている。彼の脳ミソが回転する音が聞こえてくるようだ。
負けず嫌いだなぁ…総統も私も。
『服従すれば権力に生かされ、しなければ権力に殺される…貴方の【誓い】は本当に質が悪い。
どちらを取っても貴方の掌の上だ』
「ｸｸ…これ程までに愛した女を手放すような誓いを、俺が立てると思うか？」
『笑えない冗談ですねぇ…』
冗談ではないんだがな…とぼやきながら、彼はまた１つマス兵を進める。両者の兵隊たちは、確実に相手の王へと距離を詰めて行った。
さてそろそろ女王を動かすかと手を伸ばした…
その時だ。
「A、少し外の空気でも吸いに行くか」
彼はガラスの窓に映った月を眺め、ﾎﾞｿﾘと呟いた。
憂いを帯びた表情に思わずドキリとするが、それを表に出すまいと平常通りの声を出す。
『…チェスは？』
「一時休戦としよう」
……本当にこの人は…自分勝手に何かを思い付いてはすぐに行動に移すから、たまについていけなくなる。
何でまたこんな時間に外なんかに、と思うが、そんなこと聞いたって「何となくだ」なんて返されるのがオチなんだろうな…全くなんて不毛なんだろう。
ﾊﾞｻﾘと外套を翻し、彼はソファに座ったままの私の身体…背中と膝裏に手を回した。
そのまま自らの身体に引き寄せるようにして持ち上げる。
私達はバルコニーに出た。
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あいまいアイン(プロフ) - 度々読み返しにきてしまう... (4月12日 12時) (
レス) @page10 id: cc2cd4c541 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - いやもう好きすぎてなきそう (10月2日 15時) (レス) @page9 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ミルク(プロフ) - 久々に見返しに来ました。何度読んでも飽きない天才ちゃんと主役達の掛け合いやストーリーの展開が大好きです！ラット様の気持ち次第になると思いますがこの世界が再び動き出すのを楽しみに待っています。 (9月19日 13時) (レス) @page9 id: 921529831b (このIDを非表示/違反報告)
あいまいアイン(プロフ) - 久々に見返しにきました。皆さんとのやりとりや思惑が蠢いていて楽しかったです。いつまでも更新をお待ちしています！ (5月11日 16時) (レス) id: cc2cd4c541 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - お願いします何億でも持ってくるので更新してください続きが読みたいです土下座します頼みます一生のお願いです素晴らしかったですありがとうございます†┏┛墓┗┓† (2022年12月3日 3時) (レス) @page9 id: d250e097ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ラット
| 作成日時：2019年4月11日 22時
