天才101 ページ4
「ほう…何がそんなに気に食わない？」
醜汚に塗れた笑みを浮かべた彼は問う。
私もにこりと笑顔を貼り付けた。
『権力に生かされ権力に殺されるなんて、まっぴらごめんです。それなら自ら命を絶ちます』
目を瞑り、ふっと息を吐く。
『…それと、勘違いしないでください。
私は貴方に生かされている気など毛ほどもないんですから。
私の命は私の物です。
くれぐれも勝手に掌握した気にならないでくださいね。
だって…貴方はまだ【誓い】を果たしていないんですから』
そう言うと、総統は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
彼が私に立てた誓い。
それは、「いつの日か私を完全に屈服させ、自分の物にしてみせる」というもの。
チェスの駒を動かしながら、私は笑う。
『いつかちゃんと屈服させて見せてください。
んふふ…待ってますから』
私は笑顔の裏、冷めた瞳で総統を見つめた。
______…まぁ、そう簡単には屈しないけど。
「心にも無いことを…」
笑い声を溢す私に、呆れたような声を彼は出した。勿論、私の心中を察してのことだろう。そう思うと何だか楽しい。
「お前、何故それほどにも権力を嫌う？」
チェス盤を見つめながら彼は言った。その質問に、私は思わず目を伏せる。
気になるところではあるだろうが、それは私の中ではかなりデリケートなものだ。しかしまぁ、分かっていながら不躾に質問してくるというところがまた彼らしい。
だが何故かそれを怒る気にはなれなかったし、私の口からは存外しっかりと言葉が出た。
『私は…自分が天才であることを隠して今まで生きてきました。でも本当は…私はそんなことしたくなかった。私は数学を愛していました。
だから、将来は研究者として身を立てることが夢だったんです』
今まで誰にも話さなかったこと。
自分でも忘れかけていたそれを、今何の躊躇いもなく目の前の男に打ち明けていると思うと、何だか不思議な気持ちになった。
私は淡々と言葉を重ねる。
『でもそれは許されませんでした。
世間は……私や家族をまるで化け物でも見るような目で見たから。自分のせいで家族が迫害を受けていると思うとやるせなくて仕方なかったんです。
圧倒的な大衆からの暴力…それは私からしたら権力の猛攻としか思えませんでした』
「…それが理由か」
『権力に迫害された身としては、これ以上それと同じものに振り回され、挙げ句の果て殺されるなんてことは絶対に嫌ですね。
だから私、本当に困ってるんですよ。
貴方への屈服をはね除ければ、貴方は私を殺すでしょう？』
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あいまいアイン(プロフ) - 度々読み返しにきてしまう... (4月12日 12時) (
レス) @page10 id: cc2cd4c541 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - いやもう好きすぎてなきそう (10月2日 15時) (レス) @page9 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ミルク(プロフ) - 久々に見返しに来ました。何度読んでも飽きない天才ちゃんと主役達の掛け合いやストーリーの展開が大好きです！ラット様の気持ち次第になると思いますがこの世界が再び動き出すのを楽しみに待っています。 (9月19日 13時) (レス) @page9 id: 921529831b (このIDを非表示/違反報告)
あいまいアイン(プロフ) - 久々に見返しにきました。皆さんとのやりとりや思惑が蠢いていて楽しかったです。いつまでも更新をお待ちしています！ (5月11日 16時) (レス) id: cc2cd4c541 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - お願いします何億でも持ってくるので更新してください続きが読みたいです土下座します頼みます一生のお願いです素晴らしかったですありがとうございます†┏┛墓┗┓† (2022年12月3日 3時) (レス) @page9 id: d250e097ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ラット
| 作成日時：2019年4月11日 22時
