天才55 ページ6
「ええ加減にせぇや」
エーミールが怒りに満ちた表情で低い声を出した。机に叩きつけた掌がワナワナと震えている。それが逆に、彼の怒りの強さを物語っているようだった。
「…俺だって、疑いたくなんてないねん」
彼女のふとした瞬間の優しさ、笑顔、それらが偽物だったなんて、考えたくない。
だが俺の中で、「偶然が３つ重なったら必然を疑え」という信条がある。
彼女の場合の偶然１つ目は、
「本部の前で倒れていた」ということ。
２つ目は、
「それをゾムが助けた」ということ。
３つ目は、
「不調となった監視カメラが設置された廊下を歩いていた」ということ。
更に４つ目を上げるならば、
「当の彼女が天才だった」ということか。
「……とにかく物証が残っている以上、俺としては彼女を疑わざるを得ない。気持ちは分かるが、情に流されるわけにはいかないで」
ジクジクと傷口に塩を塗られたような胸の痛みを抑えるように、俺は強く拳を握った。エーミールは悔しそうに奥歯を噛み締める。
「…俺は……あの子を信じるからな」
最後にそう言い残して、彼は部屋を出ていった。
エーミールの言葉の余韻を確かめるように、暫くの間沈黙が流れた。ロボロの指がキーボードを弾く音だけが静かな部屋に響く。
「_______俺も、Aちゃんがスパイだとは思えんけどな」
沈黙を破ったのはロボロだった。端末のキーボードを忙しなく打ち続けていた彼は、ピタリとその手を止めてこちらを見る。
「切断する監視カメラに自分の姿映すわけないやろ。彼女程の秀才が」
「ん〜…でも、監視カメラの映像が切れるタイミングでその廊下使ってたのは注目すべき点めう」
思考を巡らせる。
彼女は敵か、見方か。
2人の意見はどちらも最もなものだった。
しかし一体どうしてなのか、この２つの意見を融合させると、決して無視することのできない大きな矛盾が生じる。そのパラドックスが、俺の頭の中でぐるぐると回り始めた。
こうして考えていると、彼女の存在がまるでベールに包まれているかのように、朧気で神秘的なもののように思える。
「…調べるしかない。彼女の過去や経歴、その全てを洗い出すんや。彼女には疚しいことなんて何一つない。潔白は俺たちが証明する。俺は…この命に代えてでもあの子を守らなあかんと思っとるけんな」
俺の言葉に部屋の空気が少し和らぐ。
決意に満ちた表情で、2人も力強く頷いた。
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暁 - あれ...grさんヤンデレ...？ (9月7日 17時) (
レス) @page38 id: 1fc9dc00b9 (このIDを非表示/違反報告)
紺 - マンちゃんの反応面白すぎる 天才90とか (2021年9月17日 22時) (レス) id: 194369b6a7 (このIDを非表示/違反報告)
かい - ラットさん、この小説大好きです！これからも無理をしないていどに頑張って下さい！これからも応援してます！ (2020年2月25日 13時) (レス) id: caec64c12b (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - Look What You Make Me Do 好きなんですが、どの辺りが似てる？んか気になります！ (2020年1月6日 2時) (レス) id: 83cb691048 (このIDを非表示/違反報告)
猫好き - しんぺい神さんが常識人に見えてくる…w (2019年6月6日 1時) (レス) id: fdca804d9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ラット
| 作成日時：2019年3月11日 0時
