天才67 ページ19
それから私とひとらん様は、未だ頭を抱えている二人を残してクレープ屋さんでクレープを買い、城に戻った。
因みにその間ひとらん様は、半径1m以内にゾムさんとコネシマ様が入った場合刀に手をかけ、絶えず殺気を放っていたので、私はこの上なく安心安全に帰路を辿ることが出来たのだった。
部屋に戻り、私は椅子に腰掛け机に肘をついた。ぼんやりと窓の外、空を自由に飛び回る鳥達を眺める。
_____やはり、３人もの幹部が同時に街へ出たというのは違和感を感じざるを得ない。
『…』
………私が外出したからではないだろうか。
その考えが、先程からずっと私の頭の中に居座っていた。
恐らくだが、見張り役として城を追い出されたに違いない。
『はぁ…』
全く、何で私がこんなことに巻き込まれてるんだか…クソ、絶対犯人見つけて吊し上げてやる。
ぶつける宛のない苛立ちを乗せて、私は小さく溜め息を吐いた。
外出したところで解消される程、小さなストレスではないらしい。私の胸には依然として黒いモヤが消えることなく居座り続けていた。それは不安やら怒りやら恐怖やらをない交ぜにしたような、負の感情の塊。
______……初めてだ。
__________失うことが怖いだなんて。
疑われるのはまだ良い。
いや、良くはないがまだマシな方だ。
それより恐れるべきは、話が拗れるに拗れて、私がここに居られなくなるということ。
いつの間にか私にとって、ここでの生活はかけがえのない、そして何よりも大切なものへと変化していた。
不思議だ。
今までの人生で、誰かや何かに執着することなど全くといっていいほどなかったのに。
数学さえあれば良かった。
簡明な答えだけを求め続けてきた私が、今こんなにも面倒臭い"人間関係"なるものを築き上げて、それを失うことを何よりも恐れている。
初めて触れた人の優しさは私の心に妙な中毒性を植え付けて、この場所への執着と依存を余儀なくしていた。
『皮肉やなァ………』
最初はあんなに嫌だったのに。
今思えば、総統にあれだけ歯向かって、よくここまで生きてこられたものだ。まぁ、まさか自国の最高権力者があれだけ頭が沸いている男とは思っていなかったが。
そう、自分の命を無下に出来る程、あの頃の私は人生を捨てていた。それを変えてくれたのは、紛れもなくここの物好きな彼等だ。
だからこそ、長い時間をかけてやっと見つけた自分の居場所を、私は何としてでも守らなければいけない。
才能。自由。信頼。友人。
私は私が手にすべき物を手に入れたのだから。
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暁 - あれ...grさんヤンデレ...？ (9月7日 17時) (
レス) @page38 id: 1fc9dc00b9 (このIDを非表示/違反報告)
紺 - マンちゃんの反応面白すぎる 天才90とか (2021年9月17日 22時) (レス) id: 194369b6a7 (このIDを非表示/違反報告)
かい - ラットさん、この小説大好きです！これからも無理をしないていどに頑張って下さい！これからも応援してます！ (2020年2月25日 13時) (レス) id: caec64c12b (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - Look What You Make Me Do 好きなんですが、どの辺りが似てる？んか気になります！ (2020年1月6日 2時) (レス) id: 83cb691048 (このIDを非表示/違反報告)
猫好き - しんぺい神さんが常識人に見えてくる…w (2019年6月6日 1時) (レス) id: fdca804d9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ラット
| 作成日時：2019年3月11日 0時
