【ポケモン】晴天の私、或いは霹靂の貴方【デンジ】 (ページ8)

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7-過ぎ去るは嵐ページ8

目前でたじろぐ集団から目を離さぬまま、俺は自身が背に庇う少女に声を掛けた。

「キミの友達か？」

『や、違います…』

確認でもそんなこと聞かれるのは不名誉だ、と言わんばかりの声色だ。

今しがた悪漢の腹に一撃お見舞いした俺のレントラーが、背後でへたり込む彼女にすり寄り、注意深く匂いを嗅ぐ。すると微かにレントラーの毛を撫でる音と、空気が漏れるような笑い声がして、何て緊張感のない…と俺は少し肩の力が抜けた。

_____兎角、俺は今怒り心頭に達している。

…奴等とこの名も知らぬ女の子一人が戦っているのを、バトルの圧倒具合から黙って観戦していた身とはいえ、背後から男が少女を締め上げる様を、誰が放置できるのか。

多対一の違法ポケモンバトルを仕掛ける攻撃性や、実力で押し負ければトレーナーに手を出す浅慮な行動を、俺は一人の人間としてこれ以上看過できない。同時に、ジムリーダーとして、この街での勝手な悪事をこれ以上は許さない。

気を引き締め、ホルスターベルトからモンスターボールを引き抜く。

「_____一気に片付けるぞ」

口元に近付けたボール達に吹き込んだ。

・

その言葉と同時に、最低限の動きでもって放り投げられたモンスターボールから、3体のポケモンが飛び出す。
精悍な顔付きをしたサンダースにライチュウ、何れも電気タイプの。

その人はやる気無さげに頭を掻いて、片足に重心を掛け…脱力感満載のダルそうなポーズを取った。でも、

「_____まだこの娘に用があるなら、満足するまで俺が相手になろう。大勢で女の子取り囲むくらいポケモンバトルに飢えてたんだろ？」

後ろに巨大なエレキブルまで構えた、まだ名前も知らない彼の背中はとても大きく見えて、そんな彼の正面に対峙する彼等___ギンガ団とかいう集団には、さぞ威圧的に見えたことだろう。

「それで異存無いな」

奴等は私の傍らに伏せたままの仲間さえ放り出して、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。あの裂く様な瞳に凄まれたら、逃げ出したくなる気持ちも分かるけど…最後まで格好悪い奴等…。

後には肌を刺すような空風と、先にレントラーが落とした雷の焦げ跡だけが、地面に色濃く残っていた。一波乱が過ぎ去った余韻を感じつつも、私は長い悪夢から目覚めた様な気分になる。

安堵感に背中を丸め頭をもたげた私の目の前に…青いジャケットの裾から伸びる、大きな手が差し出された。

「怖かっただろ…すまない、俺がもっと早く助けに入っていれば良かった。

立てるか？」

先とは一変して優しげな彼の声色が、ふわりと私の頭を撫でた。