8□飛び方を忘れた鳥は2 ページ6
「……まだ、戻んないの?」
「え?」
顔は正面を向いたままこっちを見ないですそう呟いた彼
足大丈夫なんでしょ?そう聞いてきた彼に、何も言えなかった。
「お前が辛い思いしたのはわかってるし、とやかく言うつもりはないけど」
「……」
「みんなAのこと、待ってると思う」
半年前の国際試合。
私は試合中に足を変な方向に曲げて着地をしたせいで立てなくなった。
切れてますね、そう言われてすぐに手術もして、リハビリもして歩けるほどに回復はしたけど。
それでも、どうしてもコートの中に立つのが怖かった。
足が震えて、上手く飛べなくて。
「…お前がスパイク決めてるとこ見たいし。俺にとっては、お前がコートにいない方が辛い」
将洋がこっちに振り向いて、真っ直ぐな目で見てくる
「Aが頑張ってると俺もやらなきゃって思うし、それに得点挙げてコートの中で喜んでるお前の方が好きだから」
「……!」
「俺にとってはそれぐらい重要なんだよ」
普段は口下手で、そんなことなんか言ってこないのに
あまりにも真っ直ぐな目でそんな言葉を投げかけてくるから。
……何を甘えたことを言ってたんだろう。
こうやって待ってくれる人も、背中を押してくれる人もたくさんいるのに。
また怪我をすることが、
半年間のブランクで周りに置いてかれてるんじゃないかっていう恐怖が
自分の中での葛藤が晴らされていくような気がした。
「…将洋、」
「何?」
「トス、あげて欲しい。打ちたくなった」
「…わかった」
ほら、来いよ。そう言って彼が私に手を伸ばす。
その手を掴めば、ギュッと強く握られる手
視線を上げれば、彼が満足そうに笑ってて
その笑顔に私もつられて笑ってしまう。
コートに一歩踏み出す時、また左足が疼いたけど
将洋が優しく手を引っ張って私を導いてくれるから。
もう大丈夫だって思った。
飛び方を忘れた鳥は
(おー!Aさん復活?!)
(ほら、大丈夫じゃん)
(ナイスアタック!)
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noranekosan(プロフ) - リリさん» リリさんはじめまして。ありがとうございます!私もリリさんのお話読ませて頂いてたので嬉しいです。゚(っ゚´ω` ゚c)゚。今後も頑張って書いていくので、是非とも見ていってください!! (2019年11月12日 22時) (レス) id: e3a91e1b0b (このIDを非表示/違反報告)
リリ(プロフ) - はじめまして。いつも楽しく読ませていただいています。のらねこさん(とお呼びしていいのでしょうか?)の書かれるお話どれも素敵なので、これからも楽しみにしています(*´˘`*) (2019年11月12日 16時) (レス) id: 3f90fe2b5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:as | 作成日時:2019年11月2日 2時