19 弥生春 ページ19
目を覚まさない愛おしい二人の顔。始とAちゃんはあの男に…同じ日に接触をした。あの日から王国は混乱していて、俺も何日も寝ていなかった。
春「早く、目を覚ましてよ」
虚しく部屋の中に響いて空気に溶けていく。そのまま、Aちゃんのベッドに顔を伏せてしまえば逆らえない瞼の重みが襲ってくる。
『…る、は…る?』
名前を呼ばれた気がして目を開ければ、寝てしまったことに気づいた。優しい瞳が心配を写しながら俺を覗き込んでる。
春「Aちゃん!!」
体をすぐに起こして、彼女を抱きしめた。
『…春、会いたかった…』
弱くて消えてしまいそうな声が聞こえて、細い彼女の腕が俺の背中に回る。折れてしまいそうなほど細い体。すぐに何か食べるものを用意させないと…
春「…具合はどう?」
体を離して、もう一度彼女を見れば不安気な瞳が揺れていた。よく見れば涙が一筋溢れた跡があって俺はそれを拭ってあげた。
『わたしは大丈夫…え?』
何かを求めるように彼女の手が俺の手に触れ、俺の手を握る。彼女の視界に眠ったままの始入ったからだ。涙を堪えて震える声で俺を呼んだ。
『…っ、始…!どうしたの、始…』
春「…男に会ったんだ、真っ黒な…」
『…真っ黒い…男…』
春「何日も目が覚めてないんだ」
彼女は何かを知っているようだった。彼女の瞳から一気に涙が溢れ出る。頭を抱えて泣きじゃくる姿はまるで子供のようで、俺はまた彼女を抱きしめた。
『…始、はじめ…っ!やだ、始!!起きて、起きてよ…』
彼女にとっても始は大きな存在だ。嗚咽を漏らして、子供のように泣く彼女の背中を優しく撫でることくらいしか…俺にはできなかった。
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衣里(プロフ) - 初めまして、全作品読ませて頂きました、懐かしくて涙が出てきちゃいました、紅縁、スクレボ、サバコレぜひとも書いて欲しいです。これからも頑張ってください (2019年10月6日 7時) (レス) id: a37957c804 (このIDを非表示/違反報告)
mel(プロフ) - みほさん» ありがとうございます。機会があれば書いてみたいなと思っていますが、円盤が出てからになるかと思います。申し訳ございません。 (2018年11月25日 19時) (レス) id: cd9818e417 (このIDを非表示/違反報告)
みほ(プロフ) - 初めまして。いつも楽しく読ませていただいてます。紅縁のストーリーを小説化してください。 (2018年11月24日 20時) (レス) id: 40d86cc87b (このIDを非表示/違反報告)
mel(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます!更新はゆっくりですがまた遊びに来てくださると嬉しいです!お待ちしております。 (2018年9月22日 17時) (レス) id: cd9818e417 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - melさんの作品全部大好きです。また新作の更新常に楽しみにしてます!!無理せず頑張って下さい! (2018年9月20日 23時) (携帯から) (レス) id: 11be993efd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mel | 作成日時:2018年7月30日 23時