16 お姫様 ページ16
始はまたダンスが始まるからと言って、先にホールに戻ってしまった。始に伝えたいこと、少しだけ伝えられたかな。
ダンスホールを見渡せば、鳥の王女が美しい歌声を披露している。聞き入っていれば見慣れない白い耳を持った兎たちが混ざっていた。隼が言ってた、大切な人たち…？
『…あの、』
「…あ、すみません…！」
ダンスホールの片隅で、みんながダンスをしているのを眺めている白い耳を持った兎に話しかけた。慌ててた様子で、ぺこりと頭を下げられた。
『…貴方たちは、どこからいらっしゃったの？』
「あ、いや…その…」
『ふふ、そんなに怖がらないで大丈夫です。貴方たち、隼の大切な人なんでしょう？』
「あ、隼さんのこと…ご存知なんですか…？」
仮面をしたままの彼は困ったように笑っていた。彼はそのあと、夜と名乗ってくれた。わたしも自分の名を名乗り、黒兎王国の王に仕える者だと伝えた。
『夜はどうしてここに…？みんなとダンスはしないの？』
夜「あ…俺は、足が悪くて」
『…ごめんなさい、悪いこと聞いて…』
夜「Aさんこそ、ダンスはされないんですか？」
『わたしは、さっき始と…あー、黒兎の王と踊ったばっかりだから…もう役割は終わったの。静かにしてろって言われて、バルコニーに出されたの』
夜「…そうだったんですね」
『人混みはあんまり得意じゃないの。怖いから…』
夜「怖い…？」
『…あ、えっと…この耳のせいでね、酷く迫害されてたの。だから、意志を持つ者が怖くてたまらなくて…』
そう言って、忌々しい耳に触れれば…夜の視線もその耳に動く。夜は優しく笑って「きれいな色なのに…俺たち、白兎と黒兎を繋いでくれるような耳の色…」とボヤいた。
『初めてそんな風に言われた…』
夜「あ、ごめんなさい…！気に障りましたか…？」
『違うの…嬉しかった』
話をしていて気づいた。黒兎王国の一部の人間とした会話もできなかったわたしが、他国の見知らぬ人と話をしている。
夜「そろそろ終わりますね」
『そうだね、夜はこれからどうするの…？』
夜「あ、俺たちは…」
「夜、お前何やってんだ！行くぞ！！」
夜「待って、陽！また、お会いできたら嬉しいです！Aさん」
陽と呼ばれた赤髪を持つ白兎に手を引かれて、夜は行ってしまった。優しい愛おしい人たち隼は時間を過ごしている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 275人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
衣里(プロフ) - 初めまして、全作品読ませて頂きました、懐かしくて涙が出てきちゃいました、紅縁、スクレボ、サバコレぜひとも書いて欲しいです。これからも頑張ってください (2019年10月6日 7時) (
レス) id: a37957c804 (このIDを非表示/違反報告)
mel(プロフ) - みほさん» ありがとうございます。機会があれば書いてみたいなと思っていますが、円盤が出てからになるかと思います。申し訳ございません。 (2018年11月25日 19時) (レス) id: cd9818e417 (このIDを非表示/違反報告)
みほ(プロフ) - 初めまして。いつも楽しく読ませていただいてます。紅縁のストーリーを小説化してください。 (2018年11月24日 20時) (レス) id: 40d86cc87b (このIDを非表示/違反報告)
mel(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます！更新はゆっくりですがまた遊びに来てくださると嬉しいです！お待ちしております。 (2018年9月22日 17時) (レス) id: cd9818e417 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - melさんの作品全部大好きです。また新作の更新常に楽しみにしてます!!無理せず頑張って下さい! (2018年9月20日 23時) (携帯から) (レス) id: 11be993efd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mel | 作成日時：2018年7月30日 23時
