13 睦月始 ページ13
踏会を一度抜けて夜風に当たっていた。春は各国の王族たちの接待をしていて俺は自由の身だ。
夜風にのって明るい声がする。聴いたことのある優しいソプラノだ。俺はその声のする方へと足を進める。
始「A?」
呼んでみても返事はない。隣にいる男と楽しそうに話すソプラノが紡がれるだけ。
あの隣にいる男は誰だ?見たことのないだけど…どこか懐かしい記憶のある男だ。白いうさ耳を生やしてるところからしても、この黒兎王国の者ではないことはわかる。Aとあの距離で話せる者はこの黒兎王国にもほとんどいない。誰だ?
始「…全く、」
ぼやっと呟かれた言葉を風が攫っていった。
もやっとした感情だった。別に誰のものでもないのに、彼女が俺の手を離れようとしてる気がした。今までついて回って、いろんな顔を俺だけに見せてくれてた彼女が…
始「…戻る、か…」
踵を返して来た道を戻っていく。カツカツと誰かが俺の後を追う足音が聞こえた気がして、後ろを振り返った。
『始!』
ラベンダーのドレスを身に纏った彼女だった。先ほどまで、彼女がいた場所を見れば白いうさ耳を持った男が微笑みながらこちらを見ていた。口角を少し上げたあとに、その男は何もせずにその場を去っていく。
『もう、終わったの…?』
始「あ、いや…今は春が接待をしているからお前を探しに来たんだ」
『そっか…!』
俺を見上げる優しい瞳はいつもよりも少し嬉しそうで妬ける。「誰だ、あいつは」という言葉を飲み込み、彼女の手を引いた。
『わ、どこいくの!?』
始「春から聞いたぞ、不安になって落ち込んでるってな」
『う…お喋り宰相め』
始「ほら、俺はここにいる。どこにも行かない」
背中に手を回して彼女を抱きしめた。
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衣里(プロフ) - 初めまして、全作品読ませて頂きました、懐かしくて涙が出てきちゃいました、紅縁、スクレボ、サバコレぜひとも書いて欲しいです。これからも頑張ってください (2019年10月6日 7時) (レス) id: a37957c804 (このIDを非表示/違反報告)
mel(プロフ) - みほさん» ありがとうございます。機会があれば書いてみたいなと思っていますが、円盤が出てからになるかと思います。申し訳ございません。 (2018年11月25日 19時) (レス) id: cd9818e417 (このIDを非表示/違反報告)
みほ(プロフ) - 初めまして。いつも楽しく読ませていただいてます。紅縁のストーリーを小説化してください。 (2018年11月24日 20時) (レス) id: 40d86cc87b (このIDを非表示/違反報告)
mel(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます!更新はゆっくりですがまた遊びに来てくださると嬉しいです!お待ちしております。 (2018年9月22日 17時) (レス) id: cd9818e417 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - melさんの作品全部大好きです。また新作の更新常に楽しみにしてます!!無理せず頑張って下さい! (2018年9月20日 23時) (携帯から) (レス) id: 11be993efd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mel | 作成日時:2018年7月30日 23時