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「ただいまーーー!!疲れたよーー!!」
靴を脱ぎ散らかして、リビングのソファにダイブするAを尻目に、洗面所へ向かって手洗いとうがいを済ませる。俺も、振り回されて疲れたよ…と独り言ちながらリビングへ向かった。
「Aー。手洗いうがいくらいちゃんとしなさい」
Aの脱ぎ散らかした靴を揃えて、ソファに身を投げ出したAに近づく。
「もうだめ…私ソファと一体化しちゃった。もう動けない」
「バカなこといってないで、手洗いうがい!あとせめて着替えようね」
「きゃー!」
こうなったAは何を言っても動こうとしない。優しく諭すのは時間の無駄だから、腕をつかんで強制的に立たせる。
「やだーもう歩けない!オッパ、私のこと洗面所まで連れてってー!」
「………」
「ねえ!無言で腕引っ張らないでー!ごめんってー!」
駄々をこねるAを洗面所に強制連行。口をとがらせながら手を洗うAを後ろから見つめる。拗ねた時のその口、何なんだ、本当に。可愛すぎる。チューするよ? …しないけど。する勇気なんてないけど。
「…怒ってはいないけどさ、本当に心配したんだからね」
うがいを済ませたタイミングを見計らって、控えめにAの肩に頭を預けた。これくらい、幼なじみのスキンシップの範囲内だよね?
「…心配させちゃってごめんね」
「んー、許さないかも」
「えーー?」
「冗談だよ。でも、今度からなるべく残業の時も連絡してね」
「わかった」
Aの体温が名残惜しいが、頭を上げて、洗面所の鏡越しに目を合わせてにっこり微笑んだ。このままの、つかず離れずの距離でも、十分幸せ。そう自分に言い聞かせた。
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作者名:ann x他1人 | 作者ホームページ:https://plus.fm-p.jp/u/meltydaisy
作成日時:2023年6月10日 18時