もう恋なんてしないと決めたのに。

thirty-five ページ36

勇太side









『廉…』









悲しそうな表情をした加藤さん。









その顔は、とても美しくて。







瞳に、吸い込まれそうになった。





・








はっ、本題を言わなきゃ。









勇「廉と、何があったんですか？



廉、めっちゃ泣いてました。」









俺がそういうと、









加藤さんまで泣き始めた。









『…別れたの…理由があって。』









涙を拭いながら言う加藤さん。








俺は、その理由が知りたいのに。









勇「その、理由が知りたいんです。」









『ごめん、話せない。』






・







そう言って、屋上から出て行こうとしている。









でも、そんな簡単に諦めない。









パシッ









『…神宮寺くん…放して。』









勇「最後に、一つだけ聞きます。







・







・









廉のこと、今でも好きですか？」









加藤さんの腕を掴んだまま、聞いた。









『…バカじゃないの。』








手を振りほどいて、出て行く加藤さん。







・









『…好きに決まってる』







この声は、俺には届かなかった。








・









勇「廉、渡せなくてごめん…」









ネックレスが入った小さな箱。









廉から、








「昨日、Aの誕生日やったんやけど



渡せへんかったから、渡しといて。」






って言われたのに。









てか、加藤さんも意外と忘れっぽいんだな。









・









・









自分の誕生日忘れるなんて。









この箱は、もういっかい廉に渡そう。









その方が、いいんじゃないかな。








・

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