月とピアノとスタンドマイク【ツキウタ。男主】

12 phrase ページ14

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「ただい…」

新「A兄っ!!」

「ごふっ」


あの後、ラジオのゲスト出演の打ち合わせや新しくやらせてもらうラジオ冠番組の打ち合わせ、雑誌の取材、新曲の打ち合わせなどをこなし、やっと寮に辿り着く。

そして頼斗と別れ、扉を開けた途端、何かが俺の身体を直撃して、一瞬息が止まった。
慌てて駆け寄ってくる葵が「新！」と発したことで、瞬間的にソレが新だと理解が追い付く。


「ど、うしたの新、らしくないじゃん」

新「………A兄、俺は今途轍もなくテンションが上がっている」

「う…うん…見れば分かる」

新「付け加えれば、俺だけじゃなく、グラビとプロセラ全員テンションが上がっている」

「え…何で」


新だけなら兎も角、グラビ・プロセラ全員とは何事だろうか。
首を捻っていると、葵が苦笑気味にスマホの画面を見せた。新の肩越しに、目を凝らす。


“ミュージカル 藍染桜
　 新キャスト決定！”


大々的な文句が踊るその記事に、あぁそういえば、と打ち合わせで言われた新キャスト発表を思い出す。
そのキャスト一覧に視線を滑らせ、俺の動きは完全に止まった。

新しく埋まった一覧には、グラビ・プロセラ全員の名前が入っていた。


「は？ちょ、え、うそ」

新「ホントだよ。俺達共演決定だ」


新が腕の中からこちらを見上げてくる。瞳は輝いていて、まるで遊びに行く前の子供のよう。
葵は困ったように眉を下げているが、若干わくわくしているようで、笑顔のキラキラ率が三割増だ。


「まじか!!!」


ウェーイと手を挙げると、同じくウェーイと二方向からハイタッチが返ってくる。

荷物を置く暇も惜しく、小走りでルームに行くと、既に他の10人全員が集まっていた。
それぞれの反応だが、皆一様にキラキラ度が割増だ。


春「おかえりA！主演おめでと♪」

始「おめでとう」


黒年長を皮切りに、優しい声と言葉が俺を襲う。


「ありがとう！出演決定、皆おめでとう！」


若干震える声を叱咤して声を張れば、皆の笑顔が溢れて零れた。
正に“笑顔の花が咲き乱れ”るさまに、俺も負けじと笑い返した。


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