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1話 ページ1

この世界には極々稀に、能力なるものを持って生まれる人がいるらしい。

しかし、人は自分の利益と相手の気持ちを慮って行動するか。

答えは否だ。

彼らは身を隠した。自分の身を守るため。

まあ、この話を知っているのは今となってはごく一部の人間しかいないだろうけど。




いけない、遅刻する。
大学の一限に遅れてしまう、このままでは。
朝から大通りで優雅に歩きたいものだ、と人が溢れかえる街を横目で見つつ、私は店も何も無い道を走る。

服だって、出来るだけ地味な見た目を意識している。
それは、私自身なぜだかは知らない、けれどやたらと目立つことが多いから、だ。

目立つだけならいいのでは?
そう思う人もいるだろう。だが、私の目立ち方は『良くない』目立ち方なのだ。

今だって、走っているだけなのに。
「お嬢ちゃん、急いでいるのかい?おじさんの車に乗る?」
私を小学生かなにかだと思ったいるの?

「いえ、すぐそこなので、大丈夫です」
「そんなこと言わずにさ?」

構っていられない。走って逃げるしかない。
こんなことに何度もあっていたので、足の速さには自信がある。

「君、待って、なにか落としたよ?」
誰かに呼び止められ、後ろを振り向く。
ものを渡そうとする手が出ているのが見え、私も手を伸ばす。

「ありがとうご...」

お礼を述べようとしたその時、私は腕をすごい力で引っ張られる。
くらい路地裏へと。

声を出そうとした瞬間には手で口を塞がれる。

「君、能力持ち、だよね?」

なんの話なのか検討もつかない。

「シラきったって、意味無いよ。」

「女の子の能力持ちは珍しいな、売れる売れる」

このご時世に何を言っているの?この人は。
漫画と現実が混ざってしまった人なのか。
それとも、ドラマかなにかの撮影中で私が立ち入り禁止の所にでも入ったのか。

「ってか君、能力以前に良く見たらそこそこいい顔してんじゃん。お兄さんといいことしようよ。」

違う。きっと、この人はマジで言っている。

誰か、助けて。

2話→



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作者名:姫凪 | 作成日時:2018年6月23日 14時

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