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噺.9 ページ10
「あら？太宰さん、その写真の女性はもしかして横光先生じゃなくて？」
「あれ、ナオミちゃん知っているのかい？」
仕事の休憩時に昔、Aと写った写真を眺めていると、お茶を渡しに来たナオミがその人物を懐かしそうに見詰めた。
「えぇ。私の中学の時の副担任ですわ。」
「でも、よくこの写真でAちゃんだって分かったのだい？」
その写真はマフィア時代のもので、幼少期に抉られた片目は治療中で包帯をまいており、顔つきも優しさは微塵も感じられないようなAが写っていた。
「何となく面影がありますもの。」
「言われればあるねぇ…。」
「それに、横光先生。明らかに教師をやってる年に満たして居なさそうですし。」
鋭いところを突くナオミ。
勿論、教師などやってられる年ではない。
Aは現在20歳。
本来ならば最低23歳からなのだがそこは本人曰く企業秘密なのだそうだ。
「横光先生は昔から優しかったのですか？」
「ん〜？そんな事も無かったよ？」
それも私のせいか、とふと昔の映像が頭をよぎった。
四年前。
果たしてAは太宰の前で笑っていただろうか。
太宰は未だに自分のしてきた事を悔いている。
Aの為を思って彼女を傷付けたことを。
「でも、彼女は昔から廉直だったよ。」
「ふふ、私もそんな気がしますわ。」
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