第10夜 ページ10
「だからといって、すぐに傷が癒えることもない。致命傷を追えば、それなりに癒すのには時間がかかる。そしてこの腕を斬られれば、俺は死ぬ。」
現にこのように寝込んでいる、と朝霧は説明した。
自分は成功したものでは無いから何れガタがくる、とも。
「辛いんだ。」
「なんのために生きてるのか分からない。」
「死にたいんだ。」
「でも、許されない。」
あまり、感情を表に出さない朝霧が悲しげに笑った姿を見て、伊黒はどこか胸を痛めた。
儚く思えた。
手のひらからこぼれ落ちそうであった。
目の前から、消えてしまいそうであった。
彼は自分達以上に大きなものを背負ってもう40年も生きてきたのかと思うと、胸が張り裂けそうだと伊黒は内心思う。
しかし、その感情を伊黒は表に出さない。
出してはいけない気がした。
「なぁ、小芭内。」
「苦しい、苦しいよ。」
泣いていた。
自分の憧れている男が己の前で泣いている。
朝霧は消して弱い所を見せない男であった。
いつも、真っ直ぐで、瞳の色の様に、彼の日輪刀の色の様に、綺麗で、美しく、優しい男であった。
そんな男が今、目の前で泣いている。
「朝霧さんって、まるで蓮の花の様で素敵ね。」
伊黒はかつて、甘露寺が朝霧に言った言葉を思い出した。
蓮の花。
花言葉は、清らかな心。
そして、助けてください。
何時だって彼は助けを求めていたのかもしれない。
「朝霧、朝霧涼雅。」
「お前は、一人じゃない。」
伊黒はそう言って、寝ている朝霧を傷付けぬようそっと抱きしめた。
2人は静かに涙を流す。
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天麩羅 - わわわ更新されてるぅぅううう!! (2020年3月15日 22時) (レス) id: eb9a0c61ed (このIDを非表示/違反報告)
天麩羅 - わぁーーーぁああああ!面白いぃぃぃぃいいいい!更新頑張って下さいぃいい!! (2020年3月14日 22時) (レス) id: eb9a0c61ed (このIDを非表示/違反報告)
小坂谷 真夜(プロフ) - いおりさん» ありがとうございます。そのようなお言葉本当に嬉しい限りです。 (2020年2月1日 22時) (レス) id: 79a8fd2e1c (このIDを非表示/違反報告)
いおり - めっちゃどタイプの小説きたーーーっ、これからも期待して待ってます。更新頑張ってください (2020年1月12日 14時) (レス) id: bce55b4438 (このIDを非表示/違反報告)
小坂谷 真夜(プロフ) - mo4さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。 (2020年1月12日 13時) (レス) id: 79a8fd2e1c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小坂谷 真夜 | 作者ホームページ:@lotus_1022
作成日時:2019年9月9日 22時