【転スラ】世界の声の媒介者【放浪しよ】Ⅱ (ページ28)

今日:30 hit、昨日:21 hit、合計:102,706 hit

７８　約２千年の間ページ28

私はそのまま自分の秘密基地に帰り、送られた北東と北西の国の情報を整理しはじめる。少しして外の世界を放浪し始めると、風の噂であの赤毛の悪魔が魔王になった、ということを聞いた。

　テラーによる魔王になる条件聞くところによると、どうやら私も魔王になれるそうだ。１万人の生贄は南の連合王国を滅ぼしたときに余裕で手に入っているし、今はその魂は保管しているのだとか。

(まあ魔王になっても、守るものがないと意味ないしね)

　そこからは行く当てもなく、ふらふらと世界を彷徨った。新しくできた東の帝国に行ってみたり、森の中にある綺麗な湖に散策に出かけたり。だが、そんな私でも…やはり、ジュラの森に近づくのは避けていた。

そのジュラの森はメトロポリスがあった場所や南の連合王国の跡地なども侵食し、今やジュラの大森林とまで呼ばれている。

　生活に苦労はなく、薬を作っては売り、作っては売り…時に近くの村の子供たちの世話を見たり、またある時には織物を教えてもらうこともあった。だがやはり長く居過ぎると怪しまれてしまうので、ほとんど一年ごとに村や町を転々とした。

　世界には「魔王」と呼ばれるものが増えてきて、その中には星王竜ヴェルダナーヴァによって任命された調停者と呼ばれる者たちがいることも、世界のシステムの意思たる世界の声に繋がっているテラーや私には筒抜けだった。

　しばらくして、ヴェルダナーヴァに娘ができ、彼はシステムに従い殉死した。あの赤毛の悪魔――いまはギィ・クリムゾンと名乗っていたはずだが――はその娘であるミリム・ナーヴァを気にかけ、遠回しに世話を焼いていた。

　たまに周囲を巻き込んでの大喧嘩をすることもあったようだが、それなりに楽しくやっているようだ。

　そんなこんなで、かなり長い年月が過ぎた。世界をくるくると見て回っていた私は暇などなく、毎日充実した生活を送っている。情報を集め、整理し収納する仕事はやっているが、どちらかと言うと研究や魔法の実験のほうに精を出している。

　より効率的に、より効果的に魔法を使う研究や、魔法や魔力を具現化させてみたり、武器に宿らせてみたりと、前の世界ではできないことを楽しんでいる。

　そんな時に新しい噂を聞いた。ヴェルドラが消え、魔物の国が作られ始めている、というものだ。ヴェルドラは死んでいないし、今度こそ魔物と人間が共存する国を見てみたい。そう思って、その国の成長を見守ることにした。