６７ 赤毛の青年 ページ17
宿につくまでが少し遠いので、そのあたりにある出店で薄いパンにサラダと果物を挟んだ、いわゆるサンドイッチを買った。戦争中ということで肉の入っているサンドイッチがなかったのは仕方ないことなのだが、残念だ。
それを口に咥えながら、先ほど買ったブレスレットを身に着ける。これは一種の魔力貯蔵装置で、もし魔力の使用を封じられてもこれから引き出せば大丈夫、というわけだ。特に使い道はないように思われるが、まあ本来の目的はおばあさんと話すことだったし、必要経費、というわけだ。
サラダに果物かーなんか口の中がビタミンでいっぱいだな…、なんて考えながら宿への道のりを進む。ふと目の前を歩く誰かの持ち物が落ちた。それは何やら本のようで、少し分厚いのできっと値段もそれなりにするのだと当たりをつける。
(ちょ、こんなでかい物落として気づいてないのかよ)
少し呆れながらもしゃがんで本を拾い上げ、サンドイッチを一度口から話してから目の前の誰かに話しかける。
「あの、落としましたよ」
そう言いながら前に視線を向け相手の顔を改めて見ると、そこには長い赤毛の青年がいた。私のほうに振り向き、それから「ああ、悪いな」と言って本を受け取る。
その間私は青年から目を離せなかった。まず最初に思ったのは、こんなきれいな人がいるんだな、という感想。そして次の瞬間、私は彼を警戒した。
(こいつ、一般人じゃない…。魔力の保有量が断然違うし、恐らく戦闘能力もかなり高い。そしてこの気配…どちらかと言うと、人間よりはヴェルドラに近い)
警戒を緩めず、相手を慎重に観察する。
(間違いない。こいつがこの国の「最終手段」だ)
今まで培ってきた知識の中から、一つの答えを導き出す。この「最終手段」と呼ばれる男、おそらくこの国によって召喚された悪魔だろう。テラーの話を聞く限り、上位魔将であると推測できる。
「おいお前、普通のやつじゃねえな」
相手もこちらが勘ぐっているのに気づいたのか、それを正直に口に出した。ここで「はいそうです」とは言えないので、どうにかここから立ち去ることを考える。
「すいませんじろじろ見てしまって。あまりにも綺麗だったもので…不快でしたよね。失礼しました」
と一方的に話を終わらせて、その場から去った。ここに長くいるとまずい、と私は足早に宿へ向かった。
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作者名：西 | 作成日時：2017年5月22日 21時
