６３ 希望は惜しみなく奪うもの ページ13
しばらくそんな空を見つめて、不意に最初に死んでいった、あの不快で趣味の悪い兵士のことを思い出した。
(自分が下に見ていた人たちに殺されるってどんな気分だったんだろう)
そう考えるとどこか可笑しくて愉快な気持ちになった。クスクスと笑って、とうとう堪えきれずに声に出して笑う。
(あいつはどんな気持ちで苦しんだのかなあ？反省はしていたのかなあ？？きっと自分の命だけに固執して死んでいったんだ、バシェラーとは逆に！)
あの男の反応がバシェラーとは真反対で、それが逆にバシェラーの誠実さや優しさを表しているように思えたら気分がよくなった。
ひとしきり笑って、夕日の空を見る。これから自分はどうやって生きていけばいいのか分からないし、生きる意味もない。だが死ねない。前世で死んだときにはあんなに死にたくないと思っていたのに、皮肉なものだ。
(…これからどうしよう…)
少しの静寂の後、おもむろにテラーが言った。
《……見て回ってみればいいのでは》
(何を？)
《あなたが媒介するこの世界を見て回ってみては？》
(どうして？)
《そこで何か、新しい生きがいを見つけられるかもしれませんよ》
淡々と答えるテラーの説得は私の心を少し軽くしてくれた。新しい生きがい、私の生きる意味。このまま生きた屍になるくらいなら、少しくらい足掻いてみてもいいのではないか。私には動ける足があるし、すべてを司る手がある。そして、バシェラーたちが失った、命と未来がある。
《死んだときに、彼らに土産話でもして差し上げては？》
だから生きろと、理由は何でもいいからただただ生きろと、そう言われた気がした。私が死んだらテラーも消えるから、かもしれない。だけど少なくとも私には、テラーが私を心配してくれてるようにも思えたのだ。
まだ、私には味方がいる。私の絶対の味方、テラー。
(そう…そうだね。いろんなところを見て回ってみよう。千変万化するこの世界に、もう一度希望を持てるように)
まだ少し前のように希望に満ち溢れた世界が帰ってきたわけではないけれど、それでも少しは希望が見えた気がした。
(私たちの希望を奪った王国、の人たちの希望を奪って手に入れた希望って、なんだか堂々巡りしてるみたい)
私の中にある希望授与者が揺らめくのを感じながら、私はその場所から姿を消した。
〜〜追伸
このあたり分かりにくいので後でボードで解説します。ご精読ありがとうございました。
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作者名：西 | 作成日時：2017年5月22日 21時
