【転スラ】世界の声の媒介者【放浪しよ】Ⅱ (ページ11)

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６１　南の連合王国ページ11

すると、趣味の悪い軍服を着た男が兵士の波を割って出てきて、不快になる笑みを見せながら答えた。

「ガキ、メトロポリス出身かい！ママの乳がなくなって、ここまでもらいにきたのか！？ぎゃははは！」

　国都の軍用施設でこの場所では比較的高価な服を着ている限り、おそらく軍でも上位の階級についているのだろう。それがこんなに性根の腐った生ごみだったなんて、だから国は腐敗するのだ。

「貴様、この国の人民全員が殺されるのを最後まで見て苦しまずに死ぬか、まず最初に苦しんで死ぬか、どちらがいい？選ばしてやる」

　そういうと額に青筋を立てて、アックスを振り回しながら向かってきたので、返答は後者だという風に受け取った。ならば、最高に苦しんでもらおう。

(人が一番苦しみながら死ぬ方法は溺死だったと思うんだけど)

《一般的にはそうですね。ただパフォーマンス性が欠けますから、四肢を無効にしてからではどうです？》

　テラーも結構Sだと思うのだが、ここでそれを言っては今度は私が四肢切断からの溺死ルートに直行することになりそうなので黙っておく。きっとテラーにはお見通しだろうけど。

　相手のほうに右手を向け、何かをつかむようにする。同時に男の手足があらぬ方向に捩じられた。まるで雑巾絞りのように、軽々と。動けぬ肉の塊となったそれの頭部に球体の水をかぶせる。しばらくびくびくと体を震わせたが、すぐに動かなくなった。

「…バシェラーがやられた様に、ここの国民は全員斬ってやる」

　手に意識を向ける。頭にあるのは、大学に進学する前まで実家でよく眺めた模造刀。漆黒に金がちりばめられた鞘、猪首鋒に大丁子乱れの備前刀。緩やかに振るわれるそれは脇差の長さで、しかも軽く、切れ味もよさそうだ。

「…世界停止」

　その瞬間ビタリとすべての物の動きが止まる。時も流れず、空間も動かない。この世界で動けるのは私だけだ。

　世界停止とはただ単に時や空間を止めたわけではない。この世界を支配するシステムと、この世界に所属している世界の声との密接な関係がない生命体すべての流れを止める。

　たとえ天使や悪魔であろうが、創造主であろうが、この世界で活動可能なのは媒介者たる私だけなのだ。システムの書き換えを行っても何をしても、媒介者(メディウム)と言うスキルがなければ存在できない。そしてそれは私だけに許されたものであるから、実質私はオンリーワンなのだ。