【ハイキュー】うちの姉ちゃん【短編集】

選ばれなかったキミへ ページ21

「携帯持った？！」

「持ってる！」

「ハンカチ！」

「持った！」

「シューズは？！」

「ある！」



12月5日 AM 5：30


「もうバッチリや！」

「部屋に充電コード忘れとったけど」

「あっ、ほんまや！」

「バッチリちゃうやん！！」



宮家の玄関にて。


「侑〜！おにぎり持ったん？！」

「ツム、ジャージのポッケ出てんで」

「乗り換えどこかわかってるやんな？！」

「あ、靴紐解けとる」




「言われんでもわかっとるてぇ〜！」


早朝から三姉弟は騒がしい。

ちなみに両親はまだ寝よる。


「待って駅名わからん！サム、これなんて読むん？！」

「はぁん？お前こんなんも読まれへんの？」

「よ、読めるし！！」

「じゃあ何？」

「……う、うときゅう？」

「アーホ、うとみや や！」



「ウツノミヤ や！！！！

しっかりせぇよ高校生！

電車乗り遅れるから早よ行きんさい！」



宇都宮もろくに読めへん弟は、



「……よっしゃ！ほな、行ってくるわ！」

.


.



「走らんといてよー」
「切符買い間違えんなよー」

「わかっとるわ！！」



今日から5日間、ユース強化合宿。



.



.



.



「……ほんまに大丈夫やろか、アイツ」

「……姉ちゃん駅まで送ったった方がよかったんちゃう？」




＿＿＿召集が掛かったのは、侑だけ




.



.



「……なんで朝から車出さなあかんねん。」

「まぁ、せやな。まだ日登ってへんし。」



スウェットのまま隣に突っ立っている茶髪は、どんな思いで双子の片割れを見送ったのだろう。




「なぁ、おにぎりまだある？」

「おん、キッチンに置いとる。」

「腹減った〜」

「アンタも朝から大概やな」



平気な顔してるけど、わかる。

うちはバレーせぇへんから侑すごいなぁって思うだけやけど、

お前は違うやんな、治。



.

バレー始めたのもいっしょで、

高校の部活もいっしょで、

毎日毎日遅くまでいっしょに練習してきて、

顔も生まれた日も帰る家もいっしょやのに、

選ばれたのは1人だけ、って

悔しくないわけないやんな。


姉ちゃんやからわかんねん。

おにぎりを持つ手がちょっとだけ震えとること

いつもよりちょっとだけ大口開けて食べとること

その表情が、ちょっとだけ強張っとること


毎日見てきたからわかんねん。

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