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姉が、嫌いだ。
この世で1番嫌いだ。
歳の差、一つ。
小さい頃は仲が良かった。
だけど、俺が10歳になる頃から、姉は俺にひどく怯えるようになった。
姉と同じ塾に通いだすと、もともと容量の良かった俺はあっという間に姉の成績を越した。
姉の影響で始めたバレーも、いつの間にか比べ物にならないくらい上達していた。
人の倍以上努力したから。
なのに姉は、羨ましそうに俺を見る。
俺は努力して、努力を重ねてバレーも勉強も頑張っているのに。
お前は怯えているだけで何にもしない。
「私なんか」って言って惨めそうにしてるだけだ。
……なんだよ、お前が姉ちゃんだろ
自分の名前にある『ニ』の文字が大嫌いだった。
比べる価値もない。
全てにおいて俺の圧勝。
……なのに、俺は2番目。
気に食わない。
自分の名前も、
怯えるだけで何の努力もしようとしない姉も、
…俺に向ける、他人を見るような瞳も、
全部。
俺は、高校進学を機に家を出た。
頑張れば家から通えないような距離でもなかったが寮で生活することを選んだ。
姉が、嫌だったから。
名門高校に進学しバレーに打ち込む俺に、またあの目を向ける姉を容易に想像することができて、怖くなったから。
.
.
.
知ってはいた。
姉がバレー部のマネージャーをやっていることくらい。
それが、今日の対戦相手であることくらい。
「け、んじろ……」
1年以上あっていなかった姉は、昔と同じ怯えた目をしている。
「……何?」
ああ、その目が嫌いだ。
俺はお前の弟なのに、
「用がないなら話しかけて来ないで」
そんな他人を見るみたいな顔するなよ。
「待って!!!」
逃げようとすると、背後の黒に引き止められる。
「………ある、あるよ。
言いたいこと。」
振り返ると、姉の目は真っ直ぐと俺を捉えていた。
震える口から言葉を溢す。
「………絶対、負けないから」
「っ!」
はっきりと。
「烏野が、勝つから」
意思の宿った強い瞳。
それはもう、俺の知ってる姉じゃない。
「……そうかよ」
少し先で彼女の名前を呼びながら手を振る黒い集団に、腹が立って仕方なかった。
ああ、本当に気に食わない。
自分の名前も、
ただ怯えるだけで何の努力もしようとしない姉も、
俺に向ける他人を見るような瞳も、
「……絶対勝つ」
それを変えたのが、
俺じゃなくて
『烏野高校』ってことも、
全部。
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Yuna(プロフ) - 気長に待ってます!作者さまお体にお気をつけて、無理しない程度に頑張ってください! (2月25日 10時) (レス) @page38 id: 3728fbebde (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ - 白布姉の話クオリティ高すぎてもう普通に公式エピソードにあってもおかしくないくらいでした‥‥文のレべル高すぎません‥‥? (2022年9月9日 21時) (レス) @page23 id: 9441486e53 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ - 私孤爪さん、国見さん好きなんですがもうこの話大好きです。「無人島に持っていきたいぐらいです」黒尾くんの話もすきで、カレーwwwww 長文もうしわけございません。更新頑張ってください恐れながら応援しております。 (2022年8月22日 16時) (レス) @page37 id: 3a818a2bd4 (このIDを非表示/違反報告)
萌憂(プロフ) - 弧爪じゃなくて孤爪です。 (2021年2月9日 12時) (レス) id: f803e16cb6 (このIDを非表示/違反報告)
日詩(プロフ) - 茂庭さんのお姉さん書いてもらえますか? (2020年12月7日 17時) (レス) id: 6c7e156b7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葵www | 作成日時:2017年4月23日 0時