43, 駄目っつったら ページ47
-沖田side-
その夜、何と無く寝付けなかった俺が部屋の外に出ると、縁側に人影が1つ。
沖「……何やってんでィ、A。」
『……総悟こそ何してんのさ。』
亜麻色と深緑の袴に身を包んだAは、少し驚いた様な顔で言う。
風呂上がりだからなのか、いつも結んである黒髪は結ばれずに風に揺れていた。
そんなAの隣に座り込み、俺はふわぁと大きな欠伸をかます。
『怖い夢でも見たのかよ?』
沖「そりゃオメーの事だろィ。俺ァ単に寝れなかっただけでさァ。」
『僕だって怖い夢なんか見てねぇよ。厠の帰りに空見たら、綺麗だったから。』
そう言うAの目線の先にあるのは、雲の隙間から顔を覗かせた、大きな満月。
地上を月光で照らすその月は、確かにとても綺麗だった。
何気無くAの表情を伺おうとしたが、長い前髪の所為で顔が見えない。
その前髪に手を伸ばして触れると、Aは急な出来事にビクッと肩を揺らした。
『な、何してんだよ?』
沖「オメー、この前髪邪魔じゃねぇのかィ?」
さらさらの髪を弄りながら聞くと、Aは少しだけ考える様な素振りを見せた。
『んー…まぁ今まで顔隠すのには丁度良かったからな。けど今更切んのも面倒くさいし。』
そのまま放置してるだけだよ、と言って、目線だけこちらに向ける。
沖「ふーん…。」
『……あのさ、もう良い?』
沖「駄目っつったらどうなるんですかィ?」
『え、問答無用で斬るけど。』
沖「そうかィ、んじゃやれるもんならやってみなせェ。」
『やだよ、何で風呂上がりにお前の相手しなきゃいけないのさ。しかも今は刀握れないし。』
沖「ありゃ、随分と大人しくなったんですねィ?てっきり乗ってくると思ってやしたが。」
『乗れるもんなら乗りたいけど、それで傷開いたらお終いだろ。』
少しは賢くなったじゃねぇか、とからかうと、Aは俺をじっとりと睨み付けてきた。
けらけらと笑いながら、ふとある事を思い付いた俺は、なぁ、と声を掛ける。
沖「オメー、誕生日っていつなんですかィ?」
自然に聞いたその質問に、Aは急に黙り込んだ。
その顔には、呆れた様な笑みが浮かんでいた。
『そんなの知らないよ。』
物心ついた時には、もう親も家族も居なかったんだからさ、と。
何でもない事の様に淡々と言うAに、俺はまた違和感を覚える。
……Aが浮かべるこの笑顔が、こいつの本心なのだろうか?
そんな考えを押し込んで、俺はそうかィ、とだけ答えた。
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林檎はいつまでも…… - やっぱ面白いなぁ。 (2018年5月17日 19時) (レス) id: 0403755de3 (このIDを非表示/違反報告)
まめだぬき - レモンさん» コメントありがとうございます!面白いと言っていただけてとても嬉しいです!これからもよろしくお願いします♪ (2018年5月14日 8時) (レス) id: c713ce536a (このIDを非表示/違反報告)
レモン - 凄く面白い話なので、更新頑張ってください!応援してます! (2018年5月14日 0時) (レス) id: c6018d0b79 (このIDを非表示/違反報告)
まめだぬき - 白桃餅子さん» ありがとうございます!めっちゃ頑張るのでこれからもどうぞご贔屓に笑 (2018年5月6日 18時) (レス) id: 200b58f8b6 (このIDを非表示/違反報告)
白桃餅子 - お誕生日おめでとう! これからも頑張ってください! (2018年5月6日 13時) (レス) id: 7a0c5e56cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめだぬき | 作成日時:2017年12月21日 21時