32, ある映像 ページ36
十「…
『…どういう意味だよ？』
眉をひそめて問い掛けると、十六夜はニヤリと笑って言った。
十「私から、お主に……贈り物、じゃ。」
『贈り物？』
彼女は着物の右袖から何かを取り出し、カチッと押す。そして、それを部屋の端に放り投げた。
次の瞬間、その場所が
思わぬ出来事に固まった僕を見て、十六夜はさらに笑みを深める。
十「お主が失くした、過去の、記憶………全て、思い出させてやろう……！」
次第に勢いを増す炎は、あっという間に部屋を焼き尽くしていく。
畳に横たわった十六夜は、もうぴくりとも動かない。血を流し過ぎたのだ。
だが、僕の目には燃え盛る炎の他に何も映っていなかった。
逃げなければいけないと分かっているのに、身体が全く動かない。
全身が震え、段々と足に上手く力が入らなくなってきている。
突如、僕の頭に鋭い痛みが駆け巡った。
いつもならすぐに無くなる筈のそれは、無くなるどころかさらに激しく痛み出した。
がんがんと割れるように痛む頭を抑え、何とか部屋を出る。震える足でゆっくりと
廊下を進み、出来るだけ部屋から離れる。
(駄目だ、限界…。)
痛みに耐え切れず、その場にしゃがみ込む。壁に背中を預け、頭を抱える。
その時、僕の脳裏にある映像が浮かび上がった。
________僕は、ただひたすらに走っていた。人にぶつかっても、何かに躓いても、走り続けた。
何とか辿り着いたのは、大きく立派な日本家屋。
しかし、それはもう “日本家屋” と呼べる代物では無くなっていた。
轟音を上げて燃え盛る炎に包まれたその建物は、誰が見ても既に手遅れだった。
映像が切り替わり、今度は小さな民家が映し出される。
僕の目の前には、1人の女性が居た。女性は僕に何かを囁き、裏口から僕を外に出した。
僕は何が何だか分からないまま、閉まった裏口の扉を見つめる。
すると、家の中から叫び声が聞こえた。それは、間違い無くあの女性の声。
思わず扉に駆け寄った僕は、
………顔を上げた時、僕の目に真っ先に映ったのは、燃え上がる炎だった。
最後に映ったのは、あの人の顔。ずっと思い出せずにいた、“ ××× ” の顔。
それは、明らかに見覚えのあるものだった。最近、しかもとても近くで……。
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林檎はいつまでも…… - やっぱ面白いなぁ。 (2018年5月17日 19時) (
レス) id: 0403755de3 (このIDを非表示/違反報告)
まめだぬき - レモンさん» コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！これからもよろしくお願いします♪ (2018年5月14日 8時) (レス) id: c713ce536a (このIDを非表示/違反報告)
レモン - 凄く面白い話なので、更新頑張ってください！応援してます！ (2018年5月14日 0時) (レス) id: c6018d0b79 (このIDを非表示/違反報告)
まめだぬき - 白桃餅子さん» ありがとうございます！めっちゃ頑張るのでこれからもどうぞご贔屓に笑 (2018年5月6日 18時) (レス) id: 200b58f8b6 (このIDを非表示/違反報告)
白桃餅子 - お誕生日おめでとう！ これからも頑張ってください！ (2018年5月6日 13時) (レス) id: 7a0c5e56cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まめだぬき | 作成日時：2017年12月21日 21時
