. ページ13
１７時、少しだけ仕事が遅れてしまっていた私を松川さんが隣で見ながら待っていてくれている。カタカタとキーボードを叩きながら松川さんに「すみません」と謝ると「全然大丈夫。ゆっくりでいいよ」と言ってくれたがそれでも待たせて居ることが申し訳なくて急いでキーボードを叩く。
終わりは見えていたために、なんとか１７時３０分には終わらせることができて片づけをし、カバンを持って喫煙所に入った松川さんに外側からガラス張りの喫煙室を叩いけばこちらに気づいてまだ少し長かった煙草を灰皿に押し付けて喫煙室から出てくる。
「ごめんね、待たせて」
「いえ、私が終わらせられなかったので。まだ煙草長かったのになんだか急かしてしまいましたね」
「はは、俺は煙草本当はやめたいんだけどね」
「そうなんですか？」
「うん。ほら、煙草苦手な人って多いでしょ」
「まあ、そうですね。私は嫌いじゃないですけど」
エレベーターを待ちながら話していると松川さんのスマホが鳴った。長い音から着信を告げているのだとわかる。
画面を見て松川さんの顔が少し曇り、その電話には出ず、またポケットにしまう。
「出なくていいんですか？」
「うん。いいの、及川だから」
それは、いいのでしょうか。
及川さんからの着信に顔をゆがめていたのは昨日のことがあったからだろう。そう勝手に仮説を立てて降りてきたエレベーターにのりこんで1を押す。エレベーターがゆっくり閉まって狭い空間に二人きり。
暇なのか、私の髪の毛を指に絡めてくるくると回して遊ぶ松川さん。前もこんなことされたなあ、とあまり気にせず大人しくしていれば松川さんがクスリと笑う。
「……なんですか」
隣に佇む松川さんに向けて言えば松川さんお得意の「んー？」が聞こえてくる。誤魔化すときに松川さんがよく使う言葉。言葉と言えるのかは不明だが。
「前も、私の髪の毛弄ってましたよね」
「好きなんだよね」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：お湯 | 作成日時：2019年5月9日 19時
