＃１９「懐玉」 ページ35
月日は流れて、ほんの少し暑さが感じられるようになってきた。あの日約束した、彼女の呪術師としての成長は目覚しくて甚爾の日々は退屈とは程遠いものとなっていた。
甚「今日はここまでだな。」
『ええー、私まだ疲れてないんだけど。』
甚「文句言うなよ、俺がやる気ねぇんだよ。それよか、今日は儲けが出たからイける気がするんだ。」
『……はぁ？』
甚「丁度いい、ガキに大人の世界を教えてやろう。」
そう言って口角を上げる甚爾に、嫌な予感がしつつもある場所に連行されるA。目的地も分からぬまま、ただ逃げないようにと繋がれた手から有り得ない程の痛みを感じて彼女は顔を顰める。思い出したのだ、師範との出会いを。
『……ねぇ、いい加減に逃げないから離して。』
甚「照れんなよ。」
『照れてない。』
甚「……悪いことした仲だろ？」
『っ〜___!?』
囁くように言われたその言葉に、彼女は怒りか恥ずかしさか分からないけれど顔を真っ赤に染めて甚爾を睨みつける。その様子を面白そうに笑っては彼女の頭を無でる。
不機嫌になった彼女に、ご満悦な甚爾は話を始めた。
甚「そういや、デカい仕事が入った。」
『ああ、甚爾くん午前中は居なかったね。』
甚「そうだ。その仕事に、お前も同行させるからな。」
『……そんな勝手なことしていいの？』
甚「前の仕事もお前に全投げしただろ。対して問題はねぇ。」
『……でもさ。』
あまりにも歯切れ悪く反論するAに違和感を覚えて、甚爾は立ち止まって彼女を振り返る。
甚「……なんだ、嬉しくねぇのか？」
その表情は、少しばかり残念そうな顔をしていて。だが、視線が合わない彼女の顔を見て彼は杞憂だと知る。気恥しそうにもじもじと髪を弄る彼女は、とても愛らしくて。
『……嬉しくないわけ、ないじゃん。大きい仕事なんでしょ？私が居て甚爾くんの仕事の成功確率を減らしたくないだけ。』
甚「……はっ、馬鹿言うな。俺を誰だと思ってんだ？」
その愛らしさに、呆れたように笑みを浮かべてまた彼女の頭を先程よりも荒っぽく撫で回す。自身の発言に羞恥を感じて、Aは頬を膨らませた。
『…あと、私のプライドの問題だし。お荷物になりたくないだけだし。』
甚「俺のかわいい弟子が、お荷物なわけねぇだろ。」
『……………そ。』
その言葉に彼女は
少しだけ、握られていた手を握り返した。
そして甚爾は、上がる口角を見られないように前を再び向いて歩き出す。
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夕憑紅(プロフ) - 曲、私的には、なきそ様の［ ド屑 ］ だと思います。考察読んでそれっぽいなとも思いました。面白かったです。 (5月5日 21時) (
レス) @page35 id: 2500c6590e (このIDを非表示/違反報告)
エゴ信者。 - B.E.E.L.E.さん» 応援し続けてくださりありがとうございます！イメソン、めっっちゃくちゃやばかったです…。え、最高すぎましたまさにイメソンすぎて…本当にありがとうございます。引き続き頑張ります！ (1月12日 3時) (レス) id: 665876339a (このIDを非表示/違反報告)
B.E.E.L.E.(プロフ) - 続編おめでとうございます！あと、私的にイメソンはPretenderだったので悟のイメソンが可愛いすぎて笑いました！笑これからも楽しみにしてます！ (1月11日 2時) (レス) @page7 id: cde15767ef (このIDを非表示/違反報告)
エゴ信者。 - きょさん» コメントありがとうございます！そう言って貰えるだけで頑張れます…！思考が似通っていたら嬉しいです、その妄想も機会があればぜひ聞きたいです！笑 (1月11日 1時) (レス) id: 665876339a (このIDを非表示/違反報告)
きょ - うおー！！続きが気になる！これからどうなるか妄想しながら待っます！ (1月10日 2時) (レス) @page5 id: c9d0d6f436 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エゴ信者。 | 作成日時：2024年1月10日 0時
