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「おい、どうした？」
フィールドを見つめていると、後ろから西蔭の声が聞こえた。
隣を見下ろすと、そこには頭を抱えて蹲っているAがいた。
「A、どうしたんだい？」
「あ、たまが……ッ、いたい……！！」
これは……また例の反応か。
何が原因で……もしかして、風丸一朗太の使う“疾風ダッシュ”か？
あり得る。
何故なら彼女が頭痛を起こすときは決まって元雷門イレブンの必殺技を見た時だ。
「ぐ……ッ、あ……ぅ……！！」
前に見た時より頭痛の症状が酷くなっているように見える。……それもそうだ。
前回、Aを連れ出して見に行った星章学園と木戸川清修の試合の後、彼女は頭痛で倒れたと言う。その後……御堂院の指示で隠蔽されたのだろう。その工作が彼女の身体を更に蝕んでいる事を分かっていながら。
「はぁ……ッ、はぁ……ッ」
「落ち着いたかい？」
「は、い……」
Aが落ち着いた頃、フィールドでは雷門が1点を取り返した所だった。
3-3
雷門の動きが変わった。
しかし、それに便乗するかのように帝国の動きも変わった。帝国が履いてるスパイクの影響だろう。
だが、それに気づかない訳がないだろう。至近距離からそのスパイクの性能を見ているのだから。
「帝国の動きが妙ですね」
「恐らくだが、あのスパイクを使うことに罪悪感を感じ始めたんだろう」
試合再開。
西蔭の言う通り、帝国学園が鈍くなったのだ。
やはりあのスパイクの性能については選手達に伝えていなかったのだろう。いくら自分たちの意思で使っていたわけではないが、使っている事に変わりはない。ぎこちない動きに気づいた風丸が、ボールをフィールドの外に出した事で試合が中断された。
「……どうやら影山監督にはもうひとつの目的があったみたいだね」
「もうひとつ？」
「ああ。……自身を敵だと認識させる事で、チーム全体の絆を深めるという狙いがね」
帝国は控えのGKを下げ、本来のGK源田を出した。
ここからが本当の帝国という所かな。
雷門のスローインで試合再開。
雷門は素早いパス回しで前線へと繋げた。
「“ファイヤートルネード”！」
“ファイヤートルネード”が帝国のゴールへと向かう。
さて、彼の実力はどれほどかな？
「“ハイビーストファング”！」
“ハイビーストファング”と呼ばれた必殺技は“ファイヤートルネード”を難なく止めた。
そしてボールは前線へ。……カウンターだ。
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年6月6日 0時
