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あの試合で見たAの実力は、事前に調べていたものの数値を遥かに超えていた。
何よりも高かったのは、彼女の売りであった『スピード』と『体力』。
雷門に所属していた当時は男子の中に混じっても違和感なくプレーが出来るその体力と、“光”の異名を着けられる程の速さを持つ『スピード』は、王帝月ノ宮に交ざっても尚、問題なく発揮されていた。
その部分が格段に上げられた彼女の実力は、雷門に所属していた時と比べ格段に上がっていた。その変わりように観客席は盛り上がったり、静まり返ったりを繰り返していた。
『“ザ・ブラスト”』
“ザ・ブラスト”
一瞬の輝きの中、相手を抜き去る必殺技。
ボールを奪う際にも抜き去る際にも使うことができる汎用性のある技だ。
その一瞬である爆速は絶大な風速を生むため、相手を怪我させる可能性が高いと彼女自身が使うことを恐れていた。
しかし、その抵抗が彼女の中にない今、使う事を躊躇わない。
あの試合でも彼女の“ザ・ブラスト”によって怪我人が続出し、何度も交代が発生していた。
本人が使う事を躊躇っていたのも頷ける。
『“ルナインパクト”』
“ルナインパクト”
彼女の使う“ホーリードライブ”……聖なる光が月の光へと輝きを変えた必殺技。
この必殺技には“ザ・ブラスト”のような被害は少ない。……まぁ、身体を張って防いた場合は違うけど。
でも、この必殺技よりも更に強力な必殺技が存在する。
『“デスインフェルノ”』
“デスインフェルノ”
光り輝く翼を展開した……と思えばその光はすぐさま黒い炎へと変化する。
その翼で飛び上がり、黒い炎を纏ったボールを蹴り落とす必殺技。
言うなれば、彼女が『光の天使』と呼ばれたきっかけになった必殺技“シャイニングエンジェル”の別側面……地獄の天使の姿とでも言えばいいか。
黒い炎はまさに地獄の業火のよう。
そう……これが彼女の使う真打ちだ。
この必殺技は試合では使われる事は無かったが、一度だけ練習中に見た事がある。
堕ちた天使は二度と元に戻ることができない。
だが、彼女の翼はまだ輝きを失っていない。
「アイスクリーム、美味しいかい？」
テーブルに肘を突き、無言でアイスクリームを舐めているAを見つめる。
……まだ救える。
堕ちかけている天使に手を伸ばすことは出来るんだ。
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年6月6日 0時
