27 蒼き疾風 ページ30
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「悠馬。これは何？」
「知らないのかい？ アイスクリームだよ」
はい、と言ってAに渡したのはイチゴ味のソフトクリーム。
女の子は甘い物が好きだと聞く。
Aは素直にアイスクリームを受け取ると、こちらを見上げた。
どうやら食べて良いのか分からないらしい。
「食べて良いよ。僕と西蔭の分は今から取ってくるから」
「……分かった」
Aと西蔭の二人に席を占領して貰い、僕は頼んでおいた残りのアイスクリームを受け取る。
戻ってくると特に会話もなく黙って二人は僕の帰りを待っていた。
Aは無言でペロペロとアイスクリームを舐めていた。
「お待たせ」
「……野坂さん、よくそんな沢山…」
「はい」
「……ありがとう、ございます……」
僕は4つの味が乗ったアイスクリームを西蔭に渡した。
Aを間に僕と西蔭は席に着いた。
「さっきの話の続きをしようか。今、帝国学園で注目すべきなのはこの男だよ。転入したばかりの『不動明王』」
アイスクリームを食べながら携帯を触る。
その画面には帝国学園の選手データが映し出されていた。
その中にいた謎の存在、不動明王の詳細情報ページを開いた。
「何者なんでしょう？」
「まさにそれ、見たいな存在かもね」
西蔭の問いに、彼の持つアイスクリームを指指す。
正確には明らかに異質な色を醸し出している赤色のアイスクリームを指指した。
「炎の激辛ハバネロペッパー味」
「えっ、ハバネロ……？」
「一つ辛いのが混じってる事で、全体を美味しく感じられる事もあるよね」
「まさか、その説明の為にこれを……？」
敢えてその事に返答せず、そっぽを向いた。
うん、バニラアイス美味しい。
「まあでも、そのアイスクリームでなくても例えられるよ」
「？ 何でです？」
「今まさに僕達の間でアイスクリームを食べている子、とかね」
僕の言葉に西蔭はAの方を向いた。
未だにAは無言でアイスクリームを舐めていた。
そんな彼女を見ながら思い出すのは、先日の予選第4試合での事だ。
Aにとっては今年初の試合だった。
点差は14-0で王帝月ノ宮の勝利。
この14点は
何を隠そうあの試合はAの実力を測るための試合だったのだから。
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10(てん)4(し)で14
語呂合わせです
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年6月6日 0時
